コグノスケ


2021年 1月 2日

Windows と Linux のメモリ割り当て戦略

新年早々、Windows と Linux のメモリ割り当て戦略の基本的な違いをすっかり忘れていて、ひどい目に合いました。

症状としては Steam でゲームをしてると頻繁にゲームが落ちたり、ブラウザがクラッシュします。

何を調べた?

疑った順に、

AMD のグラフィクスドライバ?
  • バージョンアップしてもダメ。
  • クロックダウンしてもダメ。
  • 無効化し(Intel 内蔵グラフィクスに切り替え)てもダメ。
熱暴走?
  • Intel 内蔵グラフィクス切り替え+CPU クロックダウンで熱を抑えて、50℃行ってないのにダメ。
メモリ不足?
  • 物理メモリは数 GB 余っているのにダメ。

結論は?

仮想メモリの枯渇でした。Windows は仮想メモリを物理メモリ+ページングファイルの合計量までしか割り当てません。私の環境は物理メモリ 16GB+ページングファイル 1GB に切り詰めていたため、仮想メモリは 17GB までしか確保できません。

ゲーム+ブラウザを起動すると仮想メモリの消費量が 17GB を超えるときがあります。仮想メモリの割り当て量が上限ギリギリに達して、ゲームもしくはブラウザの運が悪い方が、仮想メモリを要求すると、割り当てに失敗します。

すると NULL ポインタが返り、NULL ポインタにアクセスしてゲーム or ブラウザがクラッシュしてしまうようです。誰一人として、仮想メモリの割り当て失敗を想定せんの?誰か 1人くらい VirtualAlloc() が失敗したって教えてくれても良いのに……。

対策は?

ページングファイルを適当に増やせば(とりあえず 16GB くらいにした)安定しました。

なぜそう判断した?

気づいたきっかけはゲーム(Cities: Skylines)のクラッシュダンプです。


クラッシュダンプのエラーログ

エラーログを見ると paging file の空きが 1MB しかありません。Windows ではこれは仮想メモリの空きを表すそうです。これを知らなかったがために、全然関係ないドライバとか熱暴走を疑い、遠回りしてしまいました。

確認方法は?

タスクマネージャーで「コミット済み」の値をチェックすると、仮想メモリの使用量がわかります。これがゲーム+ブラウザで 17GB を超えていました。


タスクマネージャー「コミット済み」の例

ダメ押しで、下記のような VirtualAlloc() API を呼んで仮想アドレスを大量にガメる(物理メモリはほぼ消費しない)プログラムを書いて、わざと仮想メモリだけを枯渇させました。

1GB ずつ仮想メモリをガメるプログラム

#include <cstdio>
#include <cstdlib>
#include <windows.h>

#define CNT    16

int main()
{
	const size_t s = 1024 * 1024 * 1024;
	char buf[1024], *pb;
	void *p[CNT];

	for (int c = 0; c < CNT; c++) {
		p[c] = VirtualAlloc(NULL, s, MEM_COMMIT, PAGE_READWRITE);

		FormatMessageA(FORMAT_MESSAGE_FROM_SYSTEM, NULL, GetLastError(), 0, buf, sizeof(buf) - 1, NULL);
		printf("%s\n", buf);

		pb = (char*)p[c];
		for (size_t i = 0; i < s / 8192; i++)
			pb[i] = (char)i;
	}

	for (int c = 0; c < CNT; c++)
		VirtualFree(p[c], s, MEM_DECOMMIT);

	return 0;
}

この状態でゲームを動かすと容易に同じクラッシュが起こせます。というわけで仮想メモリの枯渇で確定と判断しました。

反省点は?

Windows と Linux の仮想メモリ割り当て戦略は全く違うのに、同じノリで Windows のページングファイルを削ってしまったことですね……。一応、違いは知っていたんですが、行動に活かせず思い切りハマりました。

補足

Windows は仮想メモリ割当てが保守的です。仮想メモリの割り当て上限=物理メモリ+ページファイルの合計となります。

  • 利点: 全プロセスが仮想メモリ全域にアクセスしても、物理メモリ+スワップで対応できます。仮想メモリと物理メモリの対応は必ずできて、プロセスを Kill する必要は原理的に発生しません。
  • 欠点: 仮想メモリを確保だけしてアクセスしないプロセスが大量にいると、仮想メモリが先に枯渇します。物理メモリは遊んだままで無駄になります。

Linux は仮想メモリの割り当て上限>物理メモリ+スワップファイルの合計となります(over commitment)。

  • 利点: 仮想メモリを無駄に確保するやつがいても、物理メモリ+スワップを使い切れます。
  • 欠点: 全プロセスが仮想メモリにアクセスしてしまうと、仮想メモリに紐づける物理メモリ or スワップ領域が不足し、メモリ使用量を減らすためプロセスを Kill せざるを得なくなります。

Windows と Linux のメモリ割り当て戦略は、利点と欠点が逆になるだけで、どっちもどっちです。

まとめ

今回の教訓をおさらいすると、Windows を使っているのに、Linux と同じノリでページファイルを 1GB とか小さいサイズに削ると、速攻で仮想メモリが枯渇してひどい目に合うんでやめようね!ってことです。

編集者: すずき(更新: 2021年 11月 3日 13:16)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 3日

Windows の仮想メモリサイズの謎

Windows で「コミット済み」(=仮想メモリの合計)の値を求める方法がさっぱりわかりません。タスクマネージャーの「パフォーマンス」タブには下記のように値が表示されています。


タスクマネージャー「コミット済み」の例

しかしタスクマネージャーの「詳細」タブに表示される、各プロセスのコミットサイズ(=仮想メモリサイズのことらしい)を足しても全く足りません。どういうこと??


タスクマネージャー「コミットサイズ」の例

コミットサイズが全然信用できない例を挙げれば、AMD の Radeon ドライバ関連で AMDRSServ.exe というプロセスがいます。このプロセスをタスクマネージャーで見ると「5MBしか使ってないよ」とおっしゃっています。


AMDRSServ.exe のコミットサイズは 5MB

ところがプロセスを強制終了させると、突然 700MB ほど(6.2GB → 5.5GB)仮想メモリが解放されます。700MB も使っているプロセスはありませんでしたが、700MB どこから来た?意味不明ですね。


AMDRSServ.exe 強制終了前


AMDRSServ.exe 強制終了後

たぶんカーネル側というかドライバ内で仮想メモリをでかく取ると「コミット済み」と「各プロセスのコミットサイズの合計」の乖離が激しくなるんじゃないか?と予想していますが、調べ方がわかりません。

Windows を使っていて仮想メモリが枯渇するような事態に陥り、調べる必要が出てきたとしても、タスクマネージャーの表示してる「コミットサイズ」は全然信用できないってことです。ひどい作りだなあ、もう。

編集者: すずき(更新: 2021年 1月 3日 13:04)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 14日

Debian Testing と Zephyr SDK その 1 - 自分で SDK をビルド

目次: Zephyr を調べる - まとめリンク

開発用のマシンでは Debian Testing を使っているのですが、久しぶりに dist-upgrade したところ Python 3.8 が消えてしまいました。Python 3.9 に移行したみたいです。

アップデート時は「そうなんだ、3.9 になったんだな。」くらいの認識でスルーしまいたが、Zephyr を使おうとしたら異変に気づきました。なんと Zephyr SDK の GDB が動きません。どうしてこうなった。

GDB を起動するとエラー
$ riscv64-zephyr-elf-gdb
riscv64-zephyr-elf-gdb: error while loading shared libraries: libpython3.8.so.1.0: cannot open shared object file: No such file or directory

Debian は元々 Zephyr SDK のサポート範囲に入っていない(Ubuntu のみ)ですし、Debian Testing なんてサポートされるはずがないので、自力で解決する必要があります。

Zephyr SDK のビルド

Zephyr SDK のビルド手順は簡単ですが、Debian Testing だとうまくいきません。

Zephyr SDK のビルド
$ git clone https://github.com/zephyrproject-rtos/sdk-ng
$ cd sdk-ng

$ ./go.sh riscv64
./go.sh: 行 17: python: コマンドが見つかりません

Python が見つからず怒られます。Debian Testing は /usr/bin/python がなくなったため、go.sh の python を python3 に書き換えてあげると動きます。他にも Python 3.8 を想定している箇所があるので、Python 3.9 に直します。

Zephyr SDK 改変(RISC-V 64 向け)

diff --git a/configs/riscv64.config b/configs/riscv64.config
index 295f2c0..a9fc301 100644
--- a/configs/riscv64.config
+++ b/configs/riscv64.config
@@ -46,5 +46,5 @@ CT_CC_LANG_CXX=y
 CT_CC_GCC_LIBSTDCXX_NANO=y
 CT_DEBUG_GDB=y
 CT_GDB_V_9_2=y
-CT_GDB_CROSS_PYTHON_BINARY="python3.8"
+CT_GDB_CROSS_PYTHON_BINARY="python3.9"
 CT_GDB_CROSS_BUILD_NO_PYTHON=y
diff --git a/go.sh b/go.sh
index e5442fa..7a45fd8 100755
--- a/go.sh
+++ b/go.sh
@@ -14,7 +14,7 @@ fi
 
 COMMIT="d7da3a9c7f0f3a90bb4c71b91aea6cbc2471a541"
 GITDIR=${PWD}
-JOBS=$(python -c 'import multiprocessing as mp; print(mp.cpu_count())')
+JOBS=$(python3 -c 'import multiprocessing as mp; print(mp.cpu_count())')
 
 unameOut="$(uname -s)"
 unameMachine="$(uname -m)"

SDK は build/output 以下に生成されます。RISC-V 64 であれば build/output/riscv64-zephyr-elf です。生成されたバイナリが動くか確かめましょう。

生成された GDB を実行
$ cd build/output/riscv64-zephyr-elf/bin

$ ./riscv64-zephyr-elf-gdb
Segmentation fault

SEGV で死にました。うーん、だめそうですね……。次回以降、直せないかトライします。

編集者: すずき(更新: 2021年 1月 18日 16:11)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 16日

RISC-V QEMU のデバッグ用ビルド方法

目次: RISC-V - まとめリンク

たまに RISC-V 向けの QEMU の動きを見たいときがあって、デバッグビルドをするのですが、やり方を忘れがちなのでメモしておきます。

QEMU ビルド

$ mkdir build
$ cd build

$ ../configure --target-list=riscv32-softmmu,riscv32-linux-user,riscv64-softmmu,riscv64-linux-user \
    --disable-docs --enable-debug

...

qemu 5.2.50

                   Install prefix: /usr/local
                   BIOS directory: share/qemu
                    firmware path: /usr/local/share/qemu-firmware
                 binary directory: bin
                library directory: lib
                 module directory: lib/qemu
                libexec directory: libexec
                include directory: include
                 config directory: /usr/local/etc
            local state directory: /usr/local/var
                 Manual directory: share/man
                    Doc directory: /usr/local/share/doc

...

                 thread sanitizer: NO
                         rng-none: NO
                    Linux keyring: YES
                     FUSE exports: NO
                       FUSE lseek: NO

  Subprojects
                    libvhost-user: YES

Found ninja-1.10.1 at /usr/bin/ninja

$ ninja

ビルドが成功すると build ディレクトリ以下に qemu-system-riscv32 や qemu-system-riscv64 が生成されているはずです。

編集者: すずき(更新: 2021年 7月 15日 20:35)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 17日

Debian Testing と Zephyr SDK その 2 - パッチを当てて SDK ビルドをする前に

目次: Zephyr を調べる - まとめリンク

GDB と Python 3.9 の組み合わせは、SEGV でクラッシュしました。調べてみると Fedora の Bugzilla にドンピシャの情報が載っていました。Python 3.9 と GDB の組み合わせが動かなかったこと、Red Hat の人がパッチを作ってくれて、5/28 に修正されたこと、などが書いてあります。

Zephyr SDK の GDB は 9.2(2020年 5月 23日リリース)で、上記の Python 3.9 で動かすための修正は入っていません。残念。選択肢としては下記の 2つが考えられます。

  • 10.1(2020年 10月 24日リリース)を使う
  • 9.2 + クラッシュを治すパッチ(リンク)を当てる

GDB のバージョンを変えると新たな厄災を招く恐れがあるため、今回は保守的に 9.2 + パッチで行こうと思います。

基本(Crosstool-NG)に立ち戻る

Zephyr SDK は内部で Crosstool-NG というツールチェーンのビルドツールを利用しています。Zephyr SDK に突撃する前に Crosstool-NG の仕組みをおさらいし、9.2 + パッチでビルドする方法を試します。

Zephyr SDK の configs/ ディレクトリの下を見ると *.config ファイルがたくさんあります。実はこれらは Crosstool-NG のコンフィグファイルです。このファイルを Crosstool-NG にコピーするとツールチェーンが作成できます。わかりやすいですね。

Zephyr SDK が持っている Crosstool-NG のコンフィグファイル
$ cd sdk-ng

$ ls configs/
arc.config    nios2.config                  xtensa_intel_byt_adsp.config
arm.config    riscv64.config                xtensa_intel_s1000.config
arm64.config  sparc.config                  xtensa_nxp_imx8m_adsp.config
i586.config   x86_64-zephyr-elf.config      xtensa_nxp_imx_adsp.config
iamcu.config  xtensa_intel_apl_adsp.config  xtensa_sample_controller.config
mips.config   xtensa_intel_bdw_adsp.config

Crosstool-NG はツールチェーンの各モジュールにパッチを当てられます。例えば GDB 9.2 ならば packages/gdb/9.2/ の下にパッチファイルを置くと、若い番号から順番にパッチ適用してくれます。

Crosstool-NG の GDB 9.2 用パッチ
$ ls packages/gdb/9.2/

0000-musl_fix.patch                                 0004-allow-android.patch
0001-uclibc-no-gettimeofday-clobber.patch           chksum
0002-xtensa-make-sure-ar_base-is-initialized.patch  version.desc
0003-WIP-end-of-prologue-detection-hack.patch

このディレクトリに 0005-xxxx.patch のような名前のパッチを追加すると、0004-allow-android.patch のあとにパッチを当ててくれます。便利ですね。パッチ当て処理の実装を見ましょう。

Crosstool-NG のパッチ当て実装

# crosstool-ng/scripts/functions

CT_DoExtractPatch()
{

...

            CT_Pushd "${src_dir}/${basename}"
            for d in "${patch_dirs[@]}"; do
                CT_DoLog DEBUG "Looking for patches in '${d}'..."
                if [ -n "${d}" -a -d "${d}" ]; then
                    for p in "${d}"/*.patch; do    #★パッチファイルを列挙、パッチ当てる
                        if [ -f "${p}" ]; then
                            CT_DoExecLog ALL ${patch} --no-backup-if-mismatch -g0 -F1 -p1 -f -i "${p}"
                        fi
                    done
                fi
            done

...

ビルド後にできるログ build.log を Looking for patches で検索していくと、パッチを当てている箇所が確認できます。

Crosstool-NG のパッチ当てログ
...

[DEBUG]    Looking for patches in 'crosstool-ng/packages/gdb/9.2'...
[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'crosstool-ng/packages/gdb/9.2/0000-musl_fix.patch'
[ALL  ]    patching file gdb/linux-nat.c
[ALL  ]    patching file gdb/stopcode.h
[DEBUG]    ==> Return status 0
[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'crosstool-ng/packages/gdb/9.2/0001-uclibc-no-gettimeofday-clobber.patch'
[ALL  ]    patching file gnulib/configure
[ALL  ]    patching file gnulib/import/m4/gettimeofday.m4
[DEBUG]    ==> Return status 0

...

Crosstool-NG がパッチを当てる順はシェルのファイル列挙順のため、ファイル名は必ずしも数字で始める必要はないです。しかし、前例に習ったほうが良いでしょう。パッチを 0005-fix-python3.9.patch という名前で追加します。

Crosstool-NG でパッチを追加してビルド
$ git clone https://github.com/crosstool-ng/crosstool-ng
$ cd crosstool-ng

$ cat > packages/gdb/9.2/0005-fix-python3.9.patch
(パッチをコピペする)

$ ./bootstrap
$ ./configure --enable-local
$ make

$ cp ../sdk-ng/configs/riscv64.config ./.config

$ ./ct-ng menuconfig
$ ./ct-ng build

ビルド後にできるログ build.log を確認して、パッチが当たっていることを確かめます。

Crosstool-NG のパッチ追加後のログ
...

[DEBUG]    Looking for patches in 'crosstool-ng/packages/gdb/9.2'...
[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'crosstool-ng/packages/gdb/9.2/0000-musl_fix.patch'
[ALL  ]    patching file gdb/linux-nat.c
[ALL  ]    patching file gdb/stopcode.h
[DEBUG]    ==> Return status 0
[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'crosstool-ng/packages/gdb/9.2/0001-uclibc-no-gettimeofday-clobber.patch'
[ALL  ]    patching file gnulib/configure
[ALL  ]    patching file gnulib/import/m4/gettimeofday.m4
[DEBUG]    ==> Return status 0

...

[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'crosstool-ng/packages/gdb/9.2/0005-python3.9.patch'
[ALL  ]    patching file gdb/python/python.c
[ALL  ]    Hunk #1 succeeded at 234 (offset -4 lines).
[ALL  ]    Hunk #2 succeeded at 271 (offset -4 lines).
[ALL  ]    Hunk #3 succeeded at 952 (offset -19 lines).
[ALL  ]    Hunk #4 succeeded at 1552 (offset -68 lines).
[ALL  ]    Hunk #5 succeeded at 1720 (offset -70 lines).
[ALL  ]    patch unexpectedly ends in middle of line
[DEBUG]    ==> Return status 0

GDB の開発メールアーカイブから適当にコピペしてパッチを作ったので、Hunk がずれてるよって怒られましたが、パッチ当ては成功しています。あまり気にしなくても良いでしょう。ビルド後は動作確認しましょう。

Crosstool-NG でパッチ追加後のバイナリ動作確認
$ cd ~/x-tools/riscv64-zephyr-elf/bin

$ ./riscv64-zephyr-elf-gdb --version

GNU gdb (crosstool-NG 1.24.0.254_fcf3233) 9.2
Copyright (C) 2020 Free Software Foundation, Inc.
License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <http://gnu.org/licenses/gpl.html>
This is free software: you are free to change and redistribute it.
There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law.

動きました。良かった良かった。

編集者: すずき(更新: 2021年 1月 18日 16:21)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 18日

Debian Testing と Zephyr SDK その 3 - パッチを当てて SDK ビルド

目次: Zephyr を調べる - まとめリンク

前回はツールチェーンビルドの仕組みを確認するため Crosstool-NG に立ち返り、正常動作するバイナリが作成できましたが、手順が多くて面倒でした。実は Zephyr SDK だけでパッチを当てる仕組みがあります。

ローカルパッチディレクトリ

Crosstool-NG のパッチ当ては前回紹介した packages の下にあるパッチを使うのが基本ですが、他の場所(ローカルパッチディレクトリ)も追加できます。CT_LOCAL_PATCH_DIR というコンフィグに設定されます。

Crosstool-NG のローカルパッチディレクトリ設定
$ ./ct-ng menuconfig

Paths and misc options  --->
  () Local patch directory

Crosstool-NG のパッチ当て処理を見るとパッチを当てる順番を選択できるようになっています。

Crosstool-NG のパッチ当て実装

# crosstool-ng/scripts/functions

CT_DoExtractPatch()
{

...
            CT_DoLog EXTRA "Patching ${basename}"
            CT_DoExecLog ALL touch "${src_dir}/.${basename}.patching"

            bundled_patch_dir="${CT_LIB_DIR}/packages/${pkg_dir}"
            bundled_common_patch_dir="${CT_LIB_DIR}/packages/${pkg_name}"
            local_patch_dir="${CT_LOCAL_PATCH_DIR}/${pkg_dir}"    #★★ローカルパッチディレクトリ

            #★ディレクトリ名を列挙
            #★patch_order は "bundled, local" になっていた、CT_PATCH_ORDER で決まるようだ
            case "${patch_order}" in
                bundled)        patch_dirs=("${bundled_patch_dir}" "${bundled_common_patch_dir}");;
                local)          patch_dirs=("${local_patch_dir}");;
                bundled,local)  patch_dirs=("${bundled_patch_dir}" "${bundled_common_patch_dir}" "${local_patch_dir}");;
                local,bundled)  patch_dirs=("${local_patch_dir}" "${bundled_patch_dir}" "${bundled_common_patch_dir}");;
                none)           patch_dirs=;;
            esac

            CT_Pushd "${src_dir}/${basename}"
            for d in "${patch_dirs[@]}"; do    #★ディレクトリを順に辿る
                CT_DoLog DEBUG "Looking for patches in '${d}'..."
                if [ -n "${d}" -a -d "${d}" ]; then
                    for p in "${d}"/*.patch; do
                        if [ -f "${p}" ]; then
                            CT_DoExecLog ALL ${patch} --no-backup-if-mismatch -g0 -F1 -p1 -f -i "${p}"
                        fi
                    done
                fi
            done

...

今回のケースでは patch_order は "bundled, local" になっていたので、packages -> ローカルパッチの順にパッチを当てるようです。patch_order の決め方は深追いしていませんが、CT_PATCH_ORDER で決まるようです。

Zephyr SDK にパッチを追加

Zephyr SDK の設定ファイルを見るとローカルパッチディレクトリは下記のようになっています。

Zephyr SDK のローカルパッチディレクトリ設定内容
# configs/riscv64.config

...

CT_LOCAL_PATCH_DIR="${CT_TOP_DIR}/../../patches"

CT_TOP_DIR とは何でしょう?ビルドログを追うと CT_TOP_DIR=/.../sdk-ng/build/build_riscv64 でした。すなわち sdk-ng/patches がローカルパッチディレクトリです。ディレクトリには既に 6つほどのパッチが置かれています。

Zephyr SDK のローカルパッチディレクトリ(GDB 用)
$ ls patches/gdb/9.2

0001-gdb-remote-make-tid-pid-type-long-in-write_ptid.patch
0002-gdb-Add-fixes-for-stdint-and-remote-debug-on-xtensa.patch
0003-gdb-xtensa-don-t-error-out-when-registers-cannot-be-.patch
0004-gdb-xtensa-use-remote-target-register-numer.patch
0005-gdb-arch-to-tell-whether-it-supports-g-packets.patch
0006-gdb-xtensa-support-disabling-use-of-g-packet.patch

ここに Python 3.9 で落ちる問題を修正するパッチを追加します。

Zephyr SDK に GDB のパッチを追加する
$ cd sdk-ng

$ cat > patches/gdb/9.2/0007-gdb-fix-python3.9.patch
(パッチをコピペする)

$ ./go.sh riscv64

ビルドログは build/build_riscv64/build.log に作られます。

Zephyr SDK のパッチ当てログを確認
# Crosstool-NG の持っているパッチを当てているログ

[DEBUG]    Looking for patches in 'sdk-ng/share/crosstool-ng/packages/gdb/9.2'...
[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'sdk-ng/share/crosstool-ng/packages/gdb/9.2/0000-musl_fix.patch'
[ALL  ]    patching file gdb/linux-nat.c
[ALL  ]    patching file gdb/stopcode.h
[DEBUG]    ==> Return status 0

...


# Zephyr SDK のローカルパッチを当てているログ

[DEBUG]    Looking for patches in 'sdk-ng/share/crosstool-ng/packages/gdb'...
[DEBUG]    Looking for patches in 'sdk-ng/build/build_riscv64/../../patches/gdb/9.2'...
[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'sdk-ng/build/build_riscv64/../../patches/gdb/9.2/0001-gdb-remote-make-tid-pid-type-long-in-write_ptid.patch'
[ALL  ]    patching file gdb/remote.c
[DEBUG]    ==> Return status 0

...


# 追加したパッチを当てているログ

[DEBUG]    ==> Executing:  '/usr/bin/patch' '--no-backup-if-mismatch' '-g0' '-F1' '-p1' '-f' '-i' 'sdk-ng/build/build_riscv64/../../patches/gdb/9.2/0007-gdb-fix-python3.9.patch'
[ALL  ]    patching file gdb/python/python.c
[ALL  ]    Hunk #1 succeeded at 234 (offset -4 lines).
[ALL  ]    Hunk #2 succeeded at 271 (offset -4 lines).
[ALL  ]    Hunk #3 succeeded at 952 (offset -19 lines).
[ALL  ]    Hunk #4 succeeded at 1552 (offset -68 lines).
[ALL  ]    Hunk #5 succeeded at 1720 (offset -70 lines).
[ALL  ]    patch unexpectedly ends in middle of line
[DEBUG]    ==> Return status 0

ちなみに Zephyr SDK のビルド後、GDB のソースコードは sdk-ng/build/build_riscv64/.build/riscv64-zephyr-elf/src/gdb に展開されます。パッチが正常に当たったか確認するなら、このソースコードを見れば確実でしょう。

SDK は build/output 以下に生成されます。RISC-V 64 であれば build/output/riscv64-zephyr-elf です。生成されたバイナリが動くか確かめましょう。

生成された GDB を実行
$ cd build/output/riscv64-zephyr-elf/bin

$ ./riscv64-zephyr-elf-gdb --version
GNU gdb (crosstool-NG 1.24.0.212_d7da3a9) 9.2
Copyright (C) 2020 Free Software Foundation, Inc.
License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <http://gnu.org/licenses/gpl.html>
This is free software: you are free to change and redistribute it.
There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law.

動きました、良かった良かった。build/output 下に生成された riscv64-zephyr-elf ディレクトリを Zephyr SDK のインストールディレクトリ下にある同名のディレクトリと差し替えれば、GDB が動くはずです。

編集者: すずき(更新: 2021年 1月 18日 16:21)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 22日

苦境の ANA

年末(2020年 12月 20日の日記参照)に、1月は SUPER VALUE 21 J より安いチケットが VALUE 3 で出ると予想しましたが、外れましたね。1/30 の羽田→札幌便を見ると、最安は VALUE 3 J で年末からほとんど変わっていません。

いやまあ、SUPER VALUE 21 と VALUE 3 の値段がほとんど変わらない時点で、かなり異常事態なんですけど……。


1/30 の羽田→札幌便

なんと全 25便中、半分近い 11便が欠航しています。飛ばす回数を自体を減らし、客単価の維持とおそらく各便ごとの黒字を確保しているのでしょう。単発で黒字が出たとしても、確実に収益にはダメージがありますよね。安いイメージが付いてしまうより良いのかなあ?

燃料費などは減便で節約できても、飛行機はリースなので飛んでも飛ばなくてもお金が掛かります。飛ばせるならいくらでも飛ばしたいでしょう。

早いところ COVID-19 には収束してもらって、気軽に旅行や帰省できる日が来てほしいですね。ANA は今かなり苦しいでしょうけど、日本の翼を担う会社として何とか踏みとどまってほしいところ……。

編集者: すずき(更新: 2021年 1月 23日 15:09)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 30日

PlayStation Vita

久しぶりに PlayStation Vita を起動したところ、ネットワークに繋げる系アプリがほぼ全滅していました。

プラットフォーム依存のゲーム機は、本体が元気でもサードパーティの撤退やサービス終了に伴って、勝手にポンコツになってしまい悲しいです。結構高かったのに……。

ソニー製

  • flickr: 起動する、アカウント持ってないので動作不明
  • foursquare: サービス終了
  • LiveTweet: 起動する、PS Vita の内蔵ブラウザが Twitter 未サポート、アプリ認証できない
  • near: サービス終了
  • PlayStation Store: さすがにこれは動く
  • radiko.jp: 動作する
  • Reader: 起動する、機器認証でエラーになり進めなかった
  • えちゃんねる: 起動する、Twitter のアプリ認証できない

サードパーティ製

  • hulu: サービス終了
  • NHK オンデマンド: サービス終了
  • ニコニコ: サービス終了

PlayStation Store を見ると「アプリケーション」はたった 14個、サードパーティ製のアプリは 1つ(ROBOTICS; NOTES ELITE AR)だけです。PS Vita は既に 9年経過(2011年 12月発売)しており、ぶっちゃけソニーすらも Vita を見放している節があり、もう完全にオワコンです。

それなりに大きなプラットフォームの終焉を間近で見たのは貴重な体験、とはいえ、買った人は何も嬉しくないよね……。

メモ: 技術系?の話は Facebook から転記しておくことにした。多少修正。

編集者: すずき(更新: 2021年 2月 1日 11:25)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



2021年 1月 31日

その Zoom は最新ですか?

Zoom って、バージョンアップのお知らせを全くしてこないので、起動時に勝手にアップデートされていると思っていたんですが、全くそんなことはなかったですね。ずっと古いバージョンの 5.3.1(2020/09/28 リリース)のまま使っていました。

手動でアップデートしたところ、無事に最新版の 5.4.9 になりました。4ヶ月で大分数字が変わりましたね。

比較的新しいアプリの割にアップデートは保守的ですね?不思議な設計だな……??

ミーティング後に表示される説

Facebook のコメントで「ミーティングの後」にバージョンアップのお知らせが出ることを教えてもらいました。

ミーティング前にバージョンアップすると遅刻する可能性大なので、ミーティング終了後に表示するのは良いアイデアですね。でも残念ながら、見たことないんだよな……。うちの Zoom は何か変なんだろうか??

メモ: 技術系?の話は Facebook から転記しておくことにした。加筆。

編集者: すずき(更新: 2021年 2月 6日 22:35)

コメント一覧

  • コメントはありません。
open/close この記事にコメントする



こんてんつ

open/close wiki
open/close Java API

過去の日記

open/close 2002年
open/close 2003年
open/close 2004年
open/close 2005年
open/close 2006年
open/close 2007年
open/close 2008年
open/close 2009年
open/close 2010年
open/close 2011年
open/close 2012年
open/close 2013年
open/close 2014年
open/close 2015年
open/close 2016年
open/close 2017年
open/close 2018年
open/close 2019年
open/close 2020年
open/close 2021年
open/close 2022年
open/close 2023年
open/close 過去日記について

その他の情報

open/close アクセス統計
open/close サーバ一覧
open/close サイトの情報