前回は Sin 波を見ました(2014年10月18日の日記参照)が、今回は矩形波を見てみようと思います。
サンプリング周波数の 1/2 の周波数(以降、1/2 fs と書きます)の矩形波の LPCM データを下記のように表すとします。
矩形波と書きましたが、このデータをアナログに変換しても矩形波にはなりません。下記のような 22kHz の Sin 波になります。
私もそれほど詳しくはありませんが、標本化定理と言って、ある波形をサンプリング周波数 44kHz でサンプリングした際、完全に元の波形に戻せるのは 1/2 fs 未満、つまり 22kHz までの周波数を持った波形、という定理があります。それ以上は情報が失われ、元に戻せません。
見た目は周波数 22kHz の波形に見える矩形波でも、波形の立上がり、立下りの部分に高い周波数を含んでいて、この部分が失われてしまうため、元に戻らないのです。
同じ理屈で 1/4 fs の矩形波、つまり 44kHz のサンプリング周波数で、11kHz の矩形波を表そうとしても、立上がり、立下りの部分が失われ、11kHz の Sin 波になります。LPCM データの最大値は変わりませんが、22kHz の時より振幅が大きくなるのが面白いですね。
見た目が矩形波らしくなるのは 1/6 fs か 1/8 fs くらいでしょうか。つまり 44kHz のサンプリング周波数で、7.4kHz か 5.5kHz の矩形波を表そうとしたときです。
では、下記の LPCM データを使って USB-DAC で再生してみます。
各種揃えましたが、訳あって、この中からサンプリング周波数 44kHz のデータを使うことにします。まずは 1/2 fs から。
ONKYO SE-U33GXV2 の 22kHz 矩形波出力(fs = 44.1kHz)
綺麗な Sin 波です。次は 1/4 fs です。
ONKYO SE-U33GXV2 の 11kHz 矩形波出力(fs = 44.1kHz)
これも綺麗な Sin 波ですね。振幅が先ほどより大きいのがわかると思います。次は 1/6 fs と 1/8 fs です。
ONKYO SE-U33GXV2 の 7.4kHz 矩形波出力(fs = 44.1kHz)
ONKYO SE-U33GXV2 の 5.5kHz 矩形波出力(fs = 44.1kHz)
角の部分はまだガタガタしていますが、矩形波らしくなってきたのがわかります。
前回の日記(2014年 11月 15日の日記参照)では、DA 変換を理解できていなくて、いい加減な図を描いてしまったので、今日は LPCM のサンプル値から連続時間信号を生成した場合の波形を計算して描いてみようと思います。
調べたところによれば、サンプル値 x[n] を離散時間フーリエ変換し、周波数領域に変換して、得られた周波数領域のうち角周波数 -π/Ts < ω < π/Ts のみを残すローパスフィルタを掛け(※)、残った周波数領域を逆フーリエ変換すると、連続時間信号になるそうです。
(※)Ts はサンプリング周期、つまり何秒に 1回サンプリングするかを表す記号です。
計算をすっ飛ばして結果だけ言うと、時間を Ts ずつずらしながら、各サンプル値 x[n] と sinc 関数(理想的なローパスフィルタを逆フーリエ変換すると sinc 関数になる)の積を取り、全て足し合わせれば、連続時間信号になります。何故なのか説明できるほど理解できていませんが、ひとまずそういうモンということで、計算してみます。
周波数 1/2 fs の矩形波の LPCM サンプルデータと連続時間信号
サンプル値は -400 から 400 で、サンプリング周期 Ts は 20 [s]、サンプリング周波数 fs は 1/20 = 0.05 [Hz] とし、0〜960 [s] までを計算しています。横軸 t の単位は [s] です。
これだけだと、ふーん……。で終わってしまうので、わかりやすいように、1個目のサンプルと、2個目のサンプルのみで、連続時間信号を計算してみます。
赤色(系列 2)が 1個目のサンプル、緑色(系列 3)が 2個目のサンプル、青色(系列 1)が総和です。1/2 fs かつ、ピーク値が LPCM のサンプル値とほぼイコールの Sin 波が計算されるのがわかると思います。
じゃあ 1/4 fs は?というと、こうなります。
周波数 1/4 fs の矩形波の LPCM サンプルデータと連続時間信号
前回の適当な図とは違い、1/4 fs の Sin 波が出力され、ピーク値は LPCM のサンプル値を超えてしまう、という様子もよくわかると思います。ちなみに連続時間信号のピーク値は t=409(真ん中の山の頂点)で 563.7 です。
もちろん 1/6 fs や 1/8 fs も計算可能ですが、長くなってきたので、また後日にでも載せます。
前回の日記(2014年 11月 20日の日記参照)の続きです。
サンプリング周波数(以降 fs と書く)の 1/6 や 1/8 の周波数を持った矩形波の LPCM データを DA 変換したらどんな波形になりますか?という計算をしています。
周波数 1/6 fs の矩形波の LPCM サンプルデータと連続時間信号
周波数 1/8 fs の矩形波の LPCM サンプルデータと連続時間信号
前々回に掲載した USB-DAC の出力波形と比べてみても、形が似ていることがわかると思います。
ONKYO SE-U33GXV2 の 1/6 fs = 7.4kHz 矩形波出力(fs = 44.1kHz)(再掲)
ONKYO SE-U33GXV2 の 1/8 fs = 5.5kHz 矩形波出力(fs = 44.1kHz)(再掲)
当然ながら ONKYO SE-U33GXV2 は信号発発生器ではないので、波形が歪んでいても文句は言えません。しかし素人が見たり測ったりする限りでは、波形の歪みもなく、ノイズも少なく、基本に忠実な DAC です。今更ながら、良い買い物だったなあ、と思います。
そう思うなら、オシロに繋いでないで音楽聴けよって?ええ、ええ、わかってますとも。
計算に使った sinc 関数(sin(x) / x 形の関数のこと)は、やっかいなことに無限の過去から無限の未来まで値を持ちます。そのため、あるサンプルの値を変えると、過去から未来の全ての計算結果に対して影響が出ます。
下記グラフのように LPCM データ上は 0 でも、未来のデータの影響を受けるため、0 ではないレベルの信号が出力されてしまいます。
無限に影響が出るとは言っても、この世の機械では計算ができませんので、実際に売られている DAC などの機器ではどこかで影響を打ち切っていると思われます。もしくは思い切って信号の再現性は捨てて sinc 関数を使わずに計算しているはずです。
じゃあ実際、どの辺まで計算しているんでしょうね?ということで USB-DAC の鳴り始めの信号にトリガを掛けて、オシロスコープで見てみます。
ONKYO SE-U33GXV2 の 周波数 1/2 fs = 22kHz の連続時間信号の鳴り始め(fs = 44.1kHz)
なお、計算値(-400 〜 +400)と対応が取りやすいように、いずれの USB-DAC の振幅も -4V〜+4V の振幅になるように音量を調整しています。
マイナス側に一番大きく -6V くらいまで振れている波が、一番最初の LPCM データに対応した信号になります。計算したグラフと見比べるとわかりやすいです。
最初の波より前についても、計算したグラフの形と、オシロスコープの波形がほぼ一致していますので、LPCM データを入力していない部分は、値 0 の LPCM データとして扱っていると見て問題なさそうです。
セカンドオピニオンとして Creative X-Fi Go! Pro にも登場いただくことにします。前々回泣かされた Creative SB Play! とは違って、X-Fi Go! Pro の Sin 波は非常に綺麗です。
Creative X-Fi Go! Pro の 周波数 1/2 fs = 22kHz の連続時間信号の鳴り始め(fs = 44.1kHz)
何というのか、鳴り始めを打ち切ったような波形ですね。残念ながらセカンドオピニオンならず。せっかく買ったのに、ションボリですね…。
オシロスコープの波形と、0 データとの交点を数えてみると、下記のように少なくとも鳴り始めより 17〜18 個前のサンプルまで影響を及ぼしているように見えます。
ONKYO SE-U33GXV2 の鳴り始め以前の 0 との交差部分
これは少なくとも 18 サンプル以上 DAC 内部に貯めてから、信号の値を計算している、ということの現れです。たくさん貯めてから計算するほど、理想の DA 変換に近づきますが、貯めすぎれば DAC の処理遅延に繋がり、使い勝手は悪くなります。
ちなみに 18 サンプルの遅延は fs = 44.1kHz のとき、わずか 0.408 [ms] に過ぎません。ざっと、この 10倍〜20倍のサンプルを貯めてから計算しても、人間に全くわからないレベルの遅延に収まるでしょう。
恐らく、USB-DAC はもっとたくさんのサンプルを貯めていて、遅延も大きいはずなのですが、今持っている測定手段からは、これ以上の精度で信号が読めないので、真実については何とも言えませんねー……。
もっと良い測り方をご存じの方は教えていただけると嬉しいです。手持ちの機材で測れそうなら試してみます。
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