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2023年7月8日

日本語文字コードのメモ

昔、文字コードを調べたときのメモです。文字コードは詳しいサイトがたくさんあって、私が書けることはほとんどないんですが……詳しいサイトが一部消えてしまったようなので、メモを残しておきます。

JIS区点番号

JIS X 0208:1997を見ると、漢字集合を94個の区、94個の点(区点番号)で定義しています。全部で94x94 = 8336字あります。区点番号をどのバイト値として表現するか?を符号化方式とか符号化表現と言いまして、普及している方式がいくつかあります。

ISO/IEC 2022に出てくる用語G0やGL/GRやエスケープシーケンスを説明なしに使います。私もマスターという訳ではなく、調べて説明するのもしんどいので、他の詳しいサイト様を参照くださいませ。

RFC 1468(いわゆるISO-2022-JP, JISコード)

RFC 1468(リンク)で定義された符号化方式です。JISだとJIS X 0208付属書2に規定があります。MIMEではISO-2022-JPという名前で、JISコードと呼ぶ人もいますが、ISO規格でもJIS規格でもなく、RFCです。変な名前ですね……。

7bitで符号化し、第1、第2バイトともに、0x21〜0x7E(94個)の範囲を使用します。全部で94x94 = 8836字となります。区点番号と同じで素直ですね。文字集合は4つあり、エスケープシーケンスで切り替えます。

RFC 1468 (ISO-2022-JP) の使用する文字集合とエスケープシーケンス
Esc Seq    Character Set                  ISOREG

ESC ( B    ASCII                             6
ESC ( J    JIS X 0201-1976 ("Roman" set)    14
ESC $ @    JIS X 0208-1978                  42
ESC $ B    JIS X 0208-1983                  87

ISO/IEC 2022的に見ると、G0がASCII、GLにG0がロッキングシフトされている初期状態です。7bitコードなのでGRは使いません。呼び出しInvokeは使いませんのでGLはずっとG0のままです。エスケープシーケンスESC ( はG0への94文字集合(ASCIIなど)の指示Designateで、ESC $ はG0への94n文字集合(漢字など)の指示です。

  • GL領域: G0固定
  • GR領域: なし
  • G0: ASCII, JIS X 0201ローマ字, JIS X 0208
  • G1: 使わない
  • G2: 使わない
  • G3: 使わない

7bit文字しか理解できないサーバーなどを経由して文章を交換しても、情報が欠落しないように工夫された方式です。その代償と言うのかJIS X 0201片仮名、いわゆる「半角カナ」が使えません。表現する方法がないからです。

EUC-JP(Extended Unix Code)

EUC-JPが最初に規格化された場所は調べても良くわかりませんでした……。JISだとJIS X 0213付属書3に参考として表記されている符号化方式です。EUC-JIS-2004と呼ばれます。

8bitで符号化し、第1、第2バイトともに0xA1〜0xFE(94個)の範囲を使用します。全部で94x94 = 8836字となり、これも区点番号と同じで素直ですね。半角カナも対応しています。え、要らない?そう?

ISO/IEC 2022的に見ると、文字集合は4つあり、シングルシフトを使ってシフトの直後1文字分だけ切り替えます。エスケープシーケンスは使いません。

  • GL領域: G0固定
  • GR領域: G1, G2 (シングルシフト2、SS2で切り替え), G3 (シングルシフト3、SS3で切り替え)
  • G0: ASCII
  • G1: JIS X 0208
  • G2: JIS X 0201片仮名
  • G3: JIS X 0212補助漢字

ASCIIと漢字以外の文字、例えば半角片仮名を連発すると「シングルシフト+文字」のペアが連発されることになって容量的に効率が悪いですが、EUC-JPには大きな利点があります。

  • エスケープシーケンスによる漢字集合の指示を使わないので、G0〜G3に指示された漢字集合を覚える必要がない
  • ロッキングシフトによる呼び出しを使わないので、GLやGR領域に呼び出されたバッファを覚える必要がない

もっと平たく言いましょう。ISO-2022-JPは同じバイト列でも文字の種類(ASCIIか漢字か)がわかりません。最後に出てきたエスケープシーケンス次第で変わるためです。EUC-JPは文字列の途中から読みだしても文字の種類が判定できますので、文字列処理を行う際にはありがたい方式と言えるでしょう。

Shift JIS

元々はMicrosoftによる符号化方式です。JISだとJIS X 0208:1997付属書1に規定されています。「シフト符号化表現」が正式名称ですが、大抵Shift JISと呼びます。昔はJIS規格ではありませんでしたが、途中でJIS規格に取り込まれたのだとか。

第1バイトに0x81〜0x9F(31個)、0xE0〜0xEF(16個)が現れたら、第2バイト0x40〜0x7E(63個)、0x80〜0xFC(125個)が続きます。全部で47x188 = 8836字で、総数は同じですがちょっと変則的です。

ISO/IEC 2022的にはそもそも規格に沿っていないため特に何もないですね……。文字集合の切り替えやエスケープシーケンスのような仕組みは一切ありません。

Shift JISはEUC-JPと似たような特徴を持っていて、文字列の途中から読みだしても文字の種類が判定できます。また第1バイトの範囲は、英数字 (ASCII、0x21〜0x7E)や1バイト仮名(半角カナ、0xA1〜0xDF)と重複しないように配置され、シングルシフトのような仕組みなしに漢字と半角片仮名が使えます。

ISO/IEC 2022のような複雑な仕組みを理解する必要がない反面、拡張性が低いという大きな欠点があります。Shift JIS制定後にJIS X 0213が増えたとき、第1バイトの未使用領域0xF0〜0xFCで凌いだ(Shift JIS 2004)ものの、残された領域はもうありません。

編集者:すずき(2023/07/29 12:34)

コメント一覧

  • hdkさん(2023/07/10 08:35)
    ISO-2022-JPでもJIS X 0201片仮名はESC ( Iで表せばいいと思うんですけど、単にそれは使わないきまりにしたっぽいですよね。昔は電子メールでよくISO-2022-JPが使われていましたが、ESC ( IだったりSS2だったり、各クライアントが好き勝手な方法で表現していたような... 未だにiso-2022-jpといいながらESC ( Iでカタカナ入れて送ってくるコストコなんて店もありますが... (^^;
  • すずきさん(2023/07/10 11:22)
    ISO-2022-JP の独自改変は詳しくなかったんで、そんなクライアントあるんだ……とためになりました。RFC 1468 の G2 は未定義で SS2 は明らかに間違ってる気がしますね。EUC-JP と勘違いか、間違っているのを知っていて借りてきたんですかねえ?

    JIS X 0208 に片仮名(いわゆる全角カナ)はあるので、要らんと言えば要らんのですが、まあそんな単純な話じゃなかったってのは面白いところだなあと思います。
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2023年7月2日

Twitterの閲覧数制限

TwitterがWeb APIの利用を有料化&メチャクチャ高額な料金設定にしたため、ツイート情報をスクレイピングで取得しようとする人が増加して、Twitterのトラフィックが増えているようです。Twitterはスクレイピングに対する一時的な制限として、


Twitterの制限に関するElon Maskさんのツイート

このような制限を掛けました。文字起こししておくと

To address extreme levels of data scraping & system manipulation, we've applied the following temporary limits:

- Verified accounts are limited to reading 6000 posts/day
- Unverified accounts to 600 posts/day
- New unverified accounts to 300/day

です。つまり、

  • 青バッジあり: 6000件/日
  • 青バッジなし: 600件/日

この制限は結構厳しくて、普通の使い方でも割とすぐに上限に達します。特に青バッジなしの600件/日は厳しそうです……。しかも笑えることにこの制限、他ならぬツイ廃のElon Maskさん自身にも適用されてしまいました。彼はTwitterの会長兼CTOなので権力をフル活用(?)して、制限を速攻で緩和させ数時間後には、

  • 青バッジあり: 6000→8000→10000件/日
  • 青バッジなし: 600→800→1000件/日

となっていました。行き当たりばったりですね〜。これもTwitterっぽいなーと思いますけど。

私の場合Twitterと自分の生活はあまり関係ないので、今回みたいに制限や緩和でお祭り騒ぎになろうと「ハハハ、何してんだTwitterウケるわ」程度で済みますが、Twitterが商売の生命線(商品の宣伝に使うとか)な人は「何してくれてんだ、ナメてんの??」と怒りたくもなるでしょうね。

制限が少し違う形で発動した

私は青バッジユーザーなせいかしばらく制限には引っかからなかったのですが、半日くらい使っていたらついにエラーが出ました。


いいね!を押すとエラー発生

エラーメッセージを文字起こししておくと、

このリクエストは、コンピュータによる自動的なものと判断されました。アカウントをスパムやその他の迷惑行為から保護するために、現在この操作は実行できません。しばらくしてからやりなおしてください。

いいね!とツイートはできないのになぜかリツイートだけはできるのも謎です。制限の掛け方を間違ってるのでは?という気がしてなりません。

Twitterの悪い癖

制限を掛けるなとは思いませんが、何も言わずに突然仕様を変えるのはTwitterの良くない癖だと思います。1日前でも良いから予告してからやればあまり混乱しないのに……。今回も突然制限を掛けたので「バグか?サーバーの不具合か!?」と騒ぎになっていました。

編集者:すずき(2023/07/05 08:57)

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2023年6月30日

OpenOCDで独自のCSRを読みだす

目次: OpenOCD

忘れてしまうので。RISC-Vの独自(もしくは標準に準拠しているものの新しすぎるなど)のCSR(Control and Status Register)を読み出す方法をメモしておきます。GDBでOpenOCDに接続しinfo reg (レジスタ名) とすると内容が読み出せます。

CSRの名前指定で読み出す方法
(gdb) info reg mscratch mepc mcause mtval mip

mscratch       0x0      0
mepc           0x6000c580       1610663296
mcause         0xb      11
mtval          0x0      0
mip            0x880    2176

もう一つの方法としてCSRの番号指定でも読み出せます。csr(番号) という名前になります。番号は10進数で指定するようで、例えばmscratch (0x340) なら832になります。

CSRの番号指定で読み出す方法
(gdb) info reg csr832 csr833 csr834 csr835 csr836

csr832         0x0                 0
csr833         0x6000c580          1610663296
csr834         0xb                 11
csr835         0x0                 0
csr836         0x880               2176

これだけだと名前がわかりにくいだけで特に嬉しくありませんが、これから紹介するOpenOCDの設定と組み合わせると任意のCSRが読み出せるようになって非常に便利です。

NS31を例に

例としてNSITEXE NS31のRNMI CSR(mnscratch, mnepc, mncause, mnstatus(※))を読み出してみましょう。


NS31のResumable NMI CSR

書き起こしておくと0x740 mnscratch, 0x741 mnepc, 0x742 mncause, 0x744 mnstatus です。10進数ですと1856, 1857, 1858, 1860ですね。これらのCSRを読みだそうとしても、OpenOCD側が存在を認識していないためエラーになります。

未対応のCSRの読み出し
(gdb) info reg csr1856

Invalid register `csr1856'

CSRを読むためにOpenOCDを書き換えて再ビルドして……では大変すぎます。そんなお困りごとをOpenOCDもわかっていて救済策が用意されています。

OpenOCDの設定

riscv expose_csrs 1856-1860

この一行を追加してもう一度試すと、

expose_csrsで追加したCSRの読み出し
(gdb) info reg csr1856 csr1857 csr1858 csr1860

csr1856        0x0      0
csr1857        0x180188e        25172110
csr1858        0x80000000       -2147483648
csr1860        0x8      8

無事読み出すことができました。

(※)このレジスタは独自CSRではなくResumable NMIという規格で提案中のレジスタです。が、OpenOCDが未対応という意味では独自レジスタと同じなので、この例で取り上げました。

編集者:すずき(2023/09/24 09:19)

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2023年6月28日

OpenOCDのビルド

目次: OpenOCD

今まで散々OpenOCDを使っておきながら今更感がありますが、OpenOCDをソースコードからビルドする方法のメモです。

環境依存の部分を減らすためUbuntu 20.04 LTSのDockerイメージを起点にします。初めに依存ライブラリの開発用パッケージをインストールします。ドキュメントを生成するならdoxygenなども必要ですが、今回は省略しています。

依存パッケージのインストール
# apt-get install -y git gcc g++ autoconf automake libtool pkg-config make \
    libusb-1.0-0-dev libhidapi-dev libgpiod-dev libftdi1-dev

ソースコードを取得したらbootstrapを実行して(最初の1回だけで良いです)、configureを実行します。configureの最後にどんな設定が有効になったか一覧が出ます。親切で良いですね。

ソースコードの取得〜configureの実行
$ git clone https://git.code.sf.net/p/openocd/code openocd-code

$ cd openocd-code
$ ./bootstrap

(略)

$ ./configure --enable-internal-libjaylink

(略)

OpenOCD configuration summary
--------------------------------------------------
MPSSE mode of FTDI based devices        yes (auto)
ST-Link Programmer                      yes (auto)
TI ICDI JTAG Programmer                 yes (auto)
Keil ULINK JTAG Programmer              yes (auto)
Altera USB-Blaster II Compatible        yes (auto)
Bitbang mode of FT232R based devices    yes (auto)
Versaloon-Link JTAG Programmer          yes (auto)
TI XDS110 Debug Probe                   yes (auto)
CMSIS-DAP v2 Compliant Debugger         yes (auto)
OSBDM (JTAG only) Programmer            yes (auto)
eStick/opendous JTAG Programmer         yes (auto)
Olimex ARM-JTAG-EW Programmer           yes (auto)
Raisonance RLink JTAG Programmer        yes (auto)
USBProg JTAG Programmer                 yes (auto)
Espressif JTAG Programmer               yes (auto)
CMSIS-DAP Compliant Debugger            yes (auto)
Nu-Link Programmer                      yes (auto)
Cypress KitProg Programmer              yes (auto)
Altera USB-Blaster Compatible           yes (auto)
ASIX Presto Adapter                     yes (auto)
OpenJTAG Adapter                        yes (auto)
SEGGER J-Link Programmer                yes (auto)
Bus Pirate                              yes (auto)
Use Capstone disassembly framework      no

基本的にOpenOCDのconfigureは依存ライブラリを発見したら、関連する機能を自動的に有効にしてくれますので、特に何も指定する必要がありません。が、今回は --enable-internal-libjaylinkを指定してOpenOCDが内蔵しているlibjaylinkを使用しています。

なぜかというとOpenOCDはlibjaylink 0.2以降を必要としますが、Ubuntu 20.04が提供するlibjaylink(パッケージ名libjaylink-dev)はバージョンが0.1.0と古く、インストールしてもSEGGER J-Link Programmerの機能がyesにならないためです。

ログを見ていると--enable-internal-libjaylinkはdeprecatedで将来的に使えなくなるという警告が出ており、使えなくなると困ってしまうのですが……、とりあえず使える限りは使いましょう。

configure --enable-internal-libjaylinkを実行したときの警告
(略)

libjaylink configuration summary:
 - Package version ................ 0.3.1
 - Library version ................ 2:0:2
 - Installation prefix ............ /usr/local
 - Building on .................... x86_64-pc-linux-gnu
 - Building for ................... x86_64-pc-linux-gnu

Enabled transports:
 - USB ............................ yes
 - TCP ............................ yes

configure: WARNING: Using the internal libjaylink is deprecated and will not be possible in the future.

(略)

無事configureが成功したらmakeします。バイナリはsrc/ ディレクトリの下に生成されます。

ビルド
$ make

$ ./src/openocd --version

Open On-Chip Debugger 0.12.0+dev-00248-g56fd04832 (2023-06-28-00:00)
Licensed under GNU GPL v2
For bug reports, read
        http://openocd.org/doc/doxygen/bugs.html

うまくいったようです。良かった良かった。

編集者:すずき(2023/09/24 09:18)

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