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2023年3月25日

JTSA Unlimited練習記録2023

目次: 射的

スピードシューティングを始めてから10か月です。今日は、第一回目の公式記録会に参加したのと、5月には公式大会(アンリミティッド - 一般社団法人日本トイガン射撃協会JTSA)があります。今までの練習会のタイムをまとめておこうかと思います。

以前と変わらず、基本的に練習は週1回のみです。たまに練習以外のシューティング系イベントにも行きますが、記録を見る限りタイム上達とは関係なさそうです。

今回のUnlimitedの個人目標は合計80秒を切ること、です。特にこの数字に意味はありませんが、自分の実力の壁がこの辺りにあるのと、1ラウンド4秒 → 1ステージ16秒 → 合計タイムが80秒ちょうどになるので、暗算でもわかりやすいのです。


JTSA Unlimited練習会の記録

記録を見ると当初は順調に早くなり80秒を切るかと思ったら、ここ最近1〜2か月は全然ダメです。ベストタイムは2/19の80.7秒でした。

日付の * は別のエアガン(グロック17 Gen.4)を使った記録ですが、特に早くも遅くもなりませんでした。道具のせいにするな、腕が悪いんだろって?はい、その通りですね……。

タイムが上下してしまう原因は明らかでして、各ステージのベストスコアとワーストスコアのブレが激しすぎるためです。ベストスコアが偶然重なれば合計80秒台前半、ワーストスコアが重れば合計90秒台です。的を外さないよう、ステージにあったリズムで撃つ、というシューティングの基本ができていない証でしょう。精進あるのみです。

いつか週1という練習頻度の限界が来る気はしますが、まだ遠そうな気配です。あと1か月、怪我しない程度にボチボチやっていこうかなと思います。

編集者:すずき(2023/03/28 06:14)

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2023年3月24日

RISC-Vとlibstdc++ とint128

目次: RISC-V

完全に自分用メモです。自分でlibcを改造しない限りこのエラーに引っかかることはないでしょう。

前置き

世の中にCライブラリの実装はいくつかありますが、musl libcというライブラリがあります。MITライセンスで商用利用等の自由度が高く、最近ですとAWSのコンテナイメージで有名になったAlpine Linuxの標準Cライブラリです。Rustのスタティックリンクにも使われていた気がします。

そんなmusl libcですが、1.1.23からRISC-V 64bitに対応しました。しかしRISC-V 32bitはOpen Future Goalsという位置に置かれmusl libcの公式WikiのRoadmap)、しばらく実装される見込みがありません。

GNU libcならばRISC-V 32bitに対応していますが、ライセンスの特徴(GPL/LGPLを嫌がる界隈にはお勧めしづらい)とメモリ使用量が多い傾向があります。組み込み向けも狙っているので、GNU libc一本だとちょっと厳しい印象です。印象だけじゃなくてちゃんと評価した方が良い?……おっしゃる通りですね。

このような事情でmusl libcのRISC-V 32bitポーティングにトライしています。

やったこと

基本的にmusl libcは32bit/64bitで完全に実装を分ける(例: arch/arm, arch/aarch64)設計思想のようです。設計思想に従えば既に存在するarch/riscv64の横にarch/riscv32を新規に追加するのが素直でしょう。

しかしRISC-Vのツールチェーンはmultilibという64/32bitをひとまとめにしたツールチェーンを使えるので、muslの設計思想と合いません。64bit専用と32bit専用のツールチェーンに分けても良いですが、するとGNU libcと合わなくなってしまい困りました。

おそらくmusl libc的には邪道ですが、RISC-V 64bitの実装に「32bitだったらこうして」という条件を追記することにします。

ハマったこと

やっと本題です、前置きが長い!RISC-V 32bit用の移植をミスると、GCCのビルド(正確に言うとlibstdc++ のビルド)で下記のようなエラーが出ます。

エラーメッセージ
In file included from gcc/libstdc++-v3/src/c++17/floating_from_chars.cc:78:
gcc/libstdc++-v3/src/c++17/fast_float/fast_float.h: In function ‘{anonymous}::fast_float::value128 {anonymous}::fast_float::full_multiplication(uint64_t, uint64_t)’:
gcc/libstdc++-v3/src/c++17/fast_float/fast_float.h:281:3: error: ‘__uint128_t’ was not declared in this scope; did you mean ‘__int128__’?
  281 |   __uint128_t r = ((__uint128_t)a) * b;
      |   ^~~~~~~~~~~
      |   __int128__

直接の原因はGCCの挙動の差です。RISC-V 64bitだと __uint128_tを定義しますが、RISC-V 32bitだと __uint128_tを定義しません(使用すると未定義型エラーになります)。しかしなぜ __uint128_tを使うコードが有効になるのか、一見しても原因がわかりません。

調べてみるとエラーがドミノのように連鎖して起きていました。ビルドエラーを起こしているソースコードから眺めていきましょう。

ビルドエラーを起こしているソースコード

// gcc/libstdc++-v3/src/c++17/floating_from_chars.cc

#if _GLIBCXX_FLOAT_IS_IEEE_BINARY32 && _GLIBCXX_DOUBLE_IS_IEEE_BINARY64 \
    && __SIZE_WIDTH__ >= 32
# define USE_LIB_FAST_FLOAT 1
# if __LDBL_MANT_DIG__ == __DBL_MANT_DIG__
// No need to use strtold.
#  undef USE_STRTOD_FOR_FROM_CHARS
# endif
#endif

#if USE_LIB_FAST_FLOAT    //★★RISC-V 64/32bitどちらでも有効になる★★
# define FASTFLOAT_DEBUG_ASSERT __glibcxx_assert
namespace
{
# include "fast_float/fast_float.h"    //★★エラーを起こすコードを含んだヘッダ★★
} // anon namespace
#endif

ビルドエラーを起こすfast_float.hのincludeが原因?と思いましたが、64bit/32bitいずれの場合もincludeする条件が成立し、おかしなことは起きていないようです。原因はヘッダの内部でしょう。

libstdc++ のビルドエラーが起きるヘッダ

// gcc/libstdc++-v3/src/c++17/fast_float/fast_float.h

...

  // Need to check incrementally, since SIZE_MAX is a size_t, avoid overflow.
  // We can never tell the register width, but the SIZE_MAX is a good approximation.
  // UINTPTR_MAX and INTPTR_MAX are optional, so avoid them for max portability.
  #if SIZE_MAX == 0xffff
    #error Unknown platform (16-bit, unsupported)
  #elif SIZE_MAX == 0xffffffff
    #define FASTFLOAT_32BIT    //★★こちらになるはずでは??★★
  #elif SIZE_MAX == 0xffffffffffffffff
    #define FASTFLOAT_64BIT    //★★こちらが選択されるのはなぜ?★★
  #else
    #error Unknown platform (not 32-bit, not 64-bit?)
  #endif
#endif

...

// compute 64-bit a*b
fastfloat_really_inline value128 full_multiplication(uint64_t a,
                                                     uint64_t b) {
  value128 answer;
#ifdef _M_ARM64
  // ARM64 has native support for 64-bit multiplications, no need to emulate
  answer.high = __umulh(a, b);
  answer.low = a * b;
#elif defined(FASTFLOAT_32BIT) || (defined(_WIN64) && !defined(__clang__))
  answer.low = _umul128(a, b, &answer.high); // _umul128 not available on ARM64
#elif defined(FASTFLOAT_64BIT)
  __uint128_t r = ((__uint128_t)a) * b;    //★★ビルドエラー発生個所★★
  answer.low = uint64_t(r);
  answer.high = uint64_t(r >> 64);
#else
  #error Not implemented
#endif
  return answer;
}

RISC-V 32bit向けなのにFASTFLOAT_64BITが定義されたとき、__uint128_t型が使われるコードがビルドされてエラーになります。ヘッダの上の方を見るとSIZE_MAXに依存しているようで、SIZE_MAXが怪しいです。

musl libcのSIZE_MAXを定義している場所

// musl/arch/riscv64/bits/stdint.h

typedef int32_t int_fast16_t;
typedef int32_t int_fast32_t;
typedef uint32_t uint_fast16_t;
typedef uint32_t uint_fast32_t;

#define INT_FAST16_MIN  INT32_MIN
#define INT_FAST32_MIN  INT32_MIN

#define INT_FAST16_MAX  INT32_MAX
#define INT_FAST32_MAX  INT32_MAX

#define UINT_FAST16_MAX UINT32_MAX
#define UINT_FAST32_MAX UINT32_MAX

#define INTPTR_MIN      INT64_MIN
#define INTPTR_MAX      INT64_MAX
#define UINTPTR_MAX     UINT64_MAX
#define PTRDIFF_MIN     INT64_MIN
#define PTRDIFF_MAX     INT64_MAX
#define SIZE_MAX        UINT64_MAX    //★★原因★★

私の移植が適当過ぎてSIZE_MAXの値が64bit向けのままになっていたことが原因でした。先述したようにmusl libc的には邪道ではありますが、32bit向けの分岐を追加します。

修正例

#if __riscv_xlen == 64
#define INTPTR_MIN      INT64_MIN
#define INTPTR_MAX      INT64_MAX
#define UINTPTR_MAX     UINT64_MAX
#define PTRDIFF_MIN     INT64_MIN
#define PTRDIFF_MAX     INT64_MAX
#define SIZE_MAX        UINT64_MAX
#elif __riscv_xlen == 32
#define INTPTR_MIN      INT32_MIN
#define INTPTR_MAX      INT32_MAX
#define UINTPTR_MAX     UINT32_MAX
#define PTRDIFF_MIN     INT32_MIN
#define PTRDIFF_MAX     INT32_MAX
#define SIZE_MAX        UINT32_MAX
#endif

分かってしまえば簡単な話ですが、エラーメッセージからこの原因を推測するのはちょっと難しいですね……。

編集者:すずき(2023/03/28 05:33)

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