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2019年5月13日

GCCを調べる - その1 - ビルド

目次: GCC

最近GCCのコードを書き換えたり、デバッガで追ったり、GCCとお友達になろうとしています。まだ仲良くなれていませんが、入り口に立つまでが色々大変だったのと、間違いなく数カ月後に手順を忘れるので、方法を書き残しておこうと思います。

GCCのコードを書き換えて、結果を反映させるには、何らかの方法でGCCをビルドする必要があります。クロスビルド用ツールチェーンの構築は、昔の日記(2019年4月28日の日記参照)に書いたとおりです。コンパイラを追うだけで、ルートファイルシステムが必要なければ、おそらくcrosstool-NGを使うのが無難です。差分ビルドがうまく行かないので、何か変更した後に再ビルドするのがちょっと面倒ですが、それ以外は簡単で便利です。

私は再ビルドが遅くてイライラしたのと、ビルドの仕組みにも興味があったので、以前の日記(2019年4月29日の日記参照)に書いたとおり、昔作ったクロスコンパイラをビルドするMakefile(GitHubへのリンク)を改造して使っています。ブランチはorigin/develop/separate-makefileです。もうこちらを本線にしても良い気がしてきたな。

オレオレGCCビルド環境

これも使い方を忘れるのでメモしておきます。手動でビルドするのとあまり変わりません。

オレオレGCCビルド環境、ソースコード取得
#### ビルド用ディレクトリ

$ mkdir build_my_toolchain
$ cd build_my_toolchain


#### 環境構築用のリポジトリ

$ git clone https://github.com/katsuster/crosstool-builder
$ cd crosstool-builder
$ git checkout -t origin/develop/separate-makefile
$ cd ../


#### GCCだけリポジトリで取得する(git diffしたいから)

$ git clone https://gcc.gnu.org/git/gcc.git


## GCC-8.3.0を使う、他のバージョンでもある程度ビルドできるはず

$ cd gcc
$ git checkout gcc-8_3_0-release
$ cd ../


#### その他の依存モジュールはtarballを使用する

$ mkdir tmp
$ cd tmp
$ wget https://mirrors.edge.kernel.org/pub/linux/kernel/v4.x/linux-4.19.1.tar.xz
$ wget https://ftp.gnu.org/gnu/binutils/binutils-2.31.1.tar.bz2
$ wget https://ftp.gnu.org/gnu/glibc/glibc-2.28.tar.xz

$ wget https://ftp.gnu.org/gnu/gmp/gmp-6.1.2.tar.lz
$ wget https://ftp.gnu.org/gnu/mpc/mpc-1.1.0.tar.gz
$ wget https://ftp.gnu.org/gnu/mpfr/mpfr-4.0.2.tar.xz
$ cd ../


#### ツールチェーンに必要なモジュール

$ tar xf tmp/linux-4.19.1.tar.xz
$ tar xf tmp/binutils-2.31.1.tar.bz2
$ tar xf tmp/glibc-2.28.tar.xz

$ ln -s linux-4.19.1    linux
$ ln -s binutils-2.31.1 binutils
$ ln -s glibc-2.28      glibc


#### GCCに必要なモジュール

$ tar xf tmp/gmp-6.1.2.tar.lz
$ tar xf tmp/mpc-1.1.0.tar.gz
$ tar xf tmp/mpfr-4.0.2.tar.xz

$ cd gcc
$ ln -s ../gmp-6.1.2  gmp
$ ln -s ../mpc-1.1.0  mpc
$ ln -s ../mpfr-4.0.2 mpfr
$ cd ../

自分で書いていて面倒くさいなあと思いました。スクリプトにしたほうが良かったかもしれない。もしbinutilsも変更したりデバッグしたければ、tarballの代わりにリポジトリをチェックアウトしてくると良いです。

オレオレGCCビルド環境、ビルド
$ source crosstool-builder/env.sh

$ cd crosstool-builder

$ make -j4 install

デフォルトではRISC-V 64bit Linux向けのクロスコンパイラをビルドします。env.shを書き換えればAArch64やARM向けもビルド可能です。RISC-V 32bit向けはgcc-static(ベアメタル用コンパイラとして使用可能)までしかビルドできません。以降はglibcのビルドでエラーになりLinux用のクロスコンパイラはビルドできません。

オレオレGCCビルド環境、部分ビルド
$ cd crosstool-builder

$ make -f gcc-static.mk -j4 install

GCCに何か修正を入れてビルドし直すときは、ビルドし直したい *.mkファイルを指定してmake します。

編集者:すずき(2023/09/24 11:46)

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2019年5月15日

ARM SBCリスト

目次: ROCK64/ROCKPro64

最近はたくさんのARMのシングルボードコンピュータ(SBC)が市販されています。嬉しい時代になりました。これからのお買い物の参考としてリストアップしました。値段は変動するので参考です。

NVIDIA Parker
ボードJetson TX2、Denver/2GHz x 2、A57/2GHz x 4、8GB LPDDR4、16nm、$600
NVIDIA Tegra X1
ボードJetson TX1、A57/1.9GHz x 4、4GB LPDDR4、20nm、$500
HiSilicon Kirin 970
ボードHiKey 970、A73/2.36GHz x 4、A53/1.8GHz x 4、6GB LPDDR4-1866、10nm、$299
HiSilicon Kirin 960
ボードHiKey 960、A72 x 4、A53 x 4、3GB LPDDR4、16nm FinFET、$239
MediaTek Helio X20
ボードMediaTek X20、A72/2.1GHz x 2、A53/1.95GHz x 4、A53/1.4GHz x 4、2GB LPDDR3、$199
Rockchip RK3399
ボードNanoPC-T4、A72/2GHz x 2、A53/1.5GHz x 4、4GB LPDDR3-1866、$109
Samsung S5P6818
ボードNanoPC-T3 Plus、A53/1.4GHz x 8、2GB DDR3、$75
Amlogic S912
ボードが見当たらない、A53 x 8、
AllWinner H6
ボードPINE H64、A53 x 4、2GB LPDDR3-1600、$36

少し古い世代のSoCを採用したボード達です。

Amlogic S905
ボードODROID C2、A53/1.5GHz x 4、2GB DDR3、$39
Rockchip RK3328
ボードROCK64、A53/1.4GHz x 4、4GB LPDDR3-1866、$24.95 (1GB) $34.95 (2GB) $44.95 (4GB)
AllWinner H5
ボードNanoPi NEO2、A53/1.5GHz x 4、1GB DDR3、$20
Broadcom BCM2837B
ボードRaspberry Pi 3 Model B、A53/1.2GHz x 4、1GB LPDDR2、28nm、$35

以前(2018年8月12日の日記参照)載せた情報も含んでいます。

編集者:すずき(2023/09/24 12:55)

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2019年5月17日

GCCを調べる - その2 - デバッグ環境

目次: GCC

GCCをデバッグする入り口まで辿り着くのも案外大変だったので、方法を書き残しておこうと思います。

GCCはコンパイラ?

C言語(じゃなくても良いですが)をコンパイルする際に、gcc a.cのようにコマンドを起動します。一般的にgccコマンドをコンパイラと呼びますが、正確にいえばgccはコンパイラドライバ(コンパイラ、アセンブラ、リンカを順に呼び出すプログラム)です。

GCCの場合、コンパイラはcc1という名前で、コンパイラドライバgccとは別のプログラムとして存在します。コンパイラの役目は高級言語(Cなら *.cファイル)からアセンブリ言語(*.sファイル)に変換することです。

DebianのGCC 8.0だと /usr/lib/gcc/x86_64-linux-gnu/8/cc1に置かれています。クロスコンパイラの場合は様々ですが、crostool-NGでRISC-V 64bit Linux向けにビルドした場合(ビルド方法は 2019年2月26日の日記参照)は、~/x-tools/riscv64-unknown-linux-gnu/libexec/gcc/riscv64-unknown-linux-gnu/8.2.0/cc1に置かれます。ローカルビルドしないときは、~/x-toolsをクロスコンパイラをインストールしたディレクトリで読み替えてください。

コンパイラだけ起動したい

デバッガでコンパイラを追うとき、コンパイラドライバ → コンパイラだと余計な処理がたくさん挟まって邪魔なので、コンパイラ単体で起動したくなりますよね?私はなりました。特に気にならない人は読み飛ばしてください。

コンパイラcc1のオプションは、コンパイラドライバgccに渡したオプション以外にも、cc1用のオプションが渡されます。そのためcc1をシェルなどから手打ちで起動するのはちょっと難しいです。

しかし無理してコンパイラcc1のオプションを調べずとも、コンパイラドライバgccが渡すオプションをそのままパクれば良いです。gcc/gcc.cのexecute() 関数を下記のように書き換えると、cc1の起動オプションが表示されます。

コンパイラドライバgccがコンパイラcc1に渡す引数を表示

diff --git a/gcc/gcc.c b/gcc/gcc.c
index a716f708259..e48e5cca79b 100644
--- a/gcc/gcc.c
+++ b/gcc/gcc.c
@@ -3084,6 +3084,12 @@ execute (void)
       const char *errmsg;
       int err;
       const char *string = commands[i].argv[0];
+      int kkk;
+
+      printf("\n------------------------------\n");
+      for (kkk = 0; commands[i].argv[kkk]; kkk++)
+            printf("%s ", commands[i].argv[kkk]);
+      printf("\n------------------------------\n");
 
       errmsg = pex_run (pex,
 			((i + 1 == n_commands ? PEX_LAST : 0)

出力は下記のようになります。この例では、コンパイラはRISC-V 32bitベアメタル向けを使っています。

コンパイラのオプション例
------------------------------
/home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/buildroot/libexec/gcc/riscv32-unknown-elf/8.3.0/cc1 -quiet a.c -quiet -dumpbase a.c -march=rv32gc -mabi=ilp32d -auxbase a -o /tmp/ccdd2F4Z.s
------------------------------

この情報があれば、コマンドラインから単独で起動できますし、GDBで追うこともできます。

GDBでcc1をデバッグ
$ gdb /home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/buildroot/libexec/gcc/riscv32-unknown-elf/8.3.0/cc1

(gdb) b main
Breakpoint 1 at 0x4308a0: main. (2 locations)

(gdb) r a.c -dumpbase a.c -march=rv32gc -mabi=ilp32d -auxbase a -g -O0 -Wall -fdump-tree-all-raw -fdump-rtl-all -o a.s
Starting program: /home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/buildroot/libexec/gcc/riscv32-unknown-elf/8.3.0/cc1 a.c -dumpbase a.c -march=rv32gc -mabi=ilp32d -auxbase a -g -O0 -Wall -fdump-tree-all-raw -fdump-rtl-all -o a.s

Breakpoint 1, main (argc=15, argv=0x7fffffffd3c8)
    at /home/katsuhiro/share/projects/oss/crosstool-builder-new/./gcc/gcc/main.c:36
36        toplev toplev (NULL, /* external_timer */

ブレークポイントなども仕掛けられますし、変数の値を表示することもできます。解析がかなり楽になるはずです……たぶん。

編集者:すずき(2023/09/24 11:46)

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  • hdkさん(2019/05/23 21:07)
    実際に試したわけではないので素朴な疑問なのですが、cc1の引数はgcc -vで出る内容から-vと-versionあたりを外したものとは違うんでしょうか?
  • すずきさん(2019/05/25 10:35)
    試してみたら、同じみたいです。
    わざわざ改造しなくても、-v の方が簡単ですね。
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2019年5月26日

RISC-V 64 CPUが我が家に来た

目次: RISC-V

SiFiveのHiFive Unleashedを購入しました。現状、世界唯一かつ最速のLinuxが動作するRISC-V 64bit SoC です。

ボードにはSDカードが付属しておりbuildrootがインストールされています。電源を入れればLinuxが起動し、ユーザroot、パスワードsifiveでログインできるようになっていました。

インストールされているカーネルは、
Linux buildroot 4.15.0-00044-g2b0aa1d #1 SMP Tue Mar 20 12:18:35 PDT 2018 riscv64 GNU/Linux
でした。うーん、4.19かと思ったら、意外と古い?

Linuxとbuildrootだけでは面白くないのでDebian portsからriscv64向けのパッケージを引っ張ってきてDebianの環境を構築しました。

Debianのriscv64向けポーティングは絶賛作業中らしく、ffmpegなど用意されていないパッケージもチラホラありますが、自分で用意する手間を考えれば、使えるだけでどれだけありがたいかわかるというものです。

元のSDカードを書き潰すのは若干ためらわれた(後で元に戻せなくなった時に面倒)ので、今はchrootで使っています。

購入時の罠

Crowd Supplyから購入しました。本体 $999, 送料 $40, 消費税が5,000円くらい、合計で11万円くらいです。SBCにしてはかなり良いお値段です。

送料を払うのですが、家には着払いで届く点にも注意しなければなりません。

UPSが米国→日本まで持ってきて、国内はクロネコヤマトが運びます。受け取りの際に、消費税を着払いでクロネコに払う必要があります。私は消費税のことを知らなくて、何で送料を2回払うんだ??と混乱しました。

メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。かなり追記。

編集者:すずき(2021/06/28 15:29)

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2019年5月27日

がんばれHiFive Unleashed

目次: RISC-V

HiFive UnleashedにDebianを導入した記念に、いつもやっているベンチマークを取ってみました。

モナコインのハッシュ方式に使われているLyra2REv2のベンチマークです。1秒にいくつハッシュ値を計算できるか測ります。

おそらくクロスコンパイルでビルドすることもできるとは思いますが、curl, libsslなどに依存していて意外と面倒です。Debianの力を借りてセルフコンパイルすると超簡単です。

測定結果ですが、結論から言うと、Unleashedはメチャクチャ遅いです。Unleashedの結果は下記のとおりです。4コアなので4スレッド並列で測定しています。

HiFive Unleashedの測定結果
CPU #0: 4.53 kH/s
CPU #2: 4.53 kH/s
CPU #1: 4.53 kH/s
CPU #3: 4.53 kH/s
Total: 18.12 kH/s

参考までにROCKPro64 RK3399(Cortex-A72 x 2, Cortex-A53 x 4)で同じプログラムをコンパイルして測定すると、下記の結果になります。6スレッド並列です。

ROCKPro64 RK3399の測定結果
CPU #4: 64.17 kH/s
CPU #5: 64.16 kH/s
CPU #1: 34.07 kH/s
CPU #2: 34.11 kH/s
CPU #0: 33.97 kH/s
CPU #3: 33.92 kH/s
Total: 264.94 kH/s

CA72は64kH/sくらい、CA53は33kH/sくらいです。このプログラムはCubeHashにNEON対応を入れた特別版ですが、NEON対応を外してもCA53は29kH/sくらいは出ます。

買う前からUnleashedがあまり速くないことは知っていましたが、4コア束になってもCA53 1コアに勝てないとは思っていなかったです……。

しかもこのボード、かなり高価(10万円以上する)なので、お蔵入りは避けたいんですが、拡張性に乏しくて(USBがない)、一体何に使えるのか謎です。

後日追記

追加でROCK64上で測定したので、結果を載せておきます。

ROCK64 RK3328の測定結果
4 miner threads started, using 'lyra2rev2' algorithm.
CPU #2: 31.29 kH/s
CPU #0: 31.22 kH/s
CPU #1: 31.23 kH/s
CPU #3: 31.30 kH/s
Total: 125.04 kH/s

RK3399のCortex-A53とあまり変わりません。同じCPUコアで動作周波数もほぼ同じなので、当然といえば当然ですけども。

メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。多少追記。

編集者:すずき(2021/06/28 15:35)

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2019年6月3日

抗生物質

病院に行くと大抵の場合、何らかの抗生物質が処方されます。昔、おなかを壊したとき(2010年2月1日の日記参照)はホスホマイシンを処方されました。

色々種類があるようなので、ちょっとした興味で調べてみたんですが、思っていたより抗生物質の種類は多かったよ……。

系統 作用原理
β-ラクタム系 ペニシリン 細胞壁(ペプチドグリカン)に必要なムレイン架橋を阻害
アミノグリコシド系 ストレプトマイシン リボソーム50Sサブユニット、23SrRNA阻害
リンコマイシン系 リンコマイシン リボソーム50Sサブユニット阻害
ホスホマイシン系 ホスホマイシン MurA阻害、細胞壁(ペプチドグリカン)に必要なムレイン合成を阻害
テトラサイクリン系 テトラサイクリン リボソーム30Sサブユニット阻害
クロラムフェニコール系クロラムフェニコール リボソーム50Sサブユニット阻害
マクロライド系 エリスロマイシン
ケトライド系 テリスロマイシン
ポリペプチド系 コリスチン 細胞壁の傷害、合成阻害など
グリコペプチド系 バンコマイシン 細胞壁(ペプチドグリカン)に必要なムレイン合成を阻害
キノロン系 キノロン DNAジャイレース阻害
ニューキノロン系 フルオロキノロン DNAジャイレース阻害
サルファ剤 サルファメソキサゾール葉酸合成阻害
オキサゾリジノン系 リネゾリド リボソーム50Sサブユニット阻害

「〜マイシン」という命名が多いです。これは放線菌(Streptomyces属)が産出する抗菌剤を意味するのだとか。なぜ放線菌が数多の抗生物質を作り出すのか、不思議ですね?

細菌に存在する生命維持の機構も、いくつか種類があるので、万能の抗生物質はありません。理解しているのはこのくらいで、作用原理は書き写してみたものの、詳しい仕組みは知りません。

抗生物質の基本的な戦略

付け焼刃の知識ですが、抗生物質の基本的な戦略は、
「人間には存在せず、細菌にしか存在しない生命維持もしくは増殖機構を妨害する」
当たり前ですよね、人間の生命活動まで妨害したら、細菌と一緒に人間まで死んでしまう(=副作用)ので、薬として成立しません。

例えば、リボソームはmRNAからたんぱく質を生成する器官です。リボソームの働きを妨害すると生命維持に必要なたんぱく質が作れなくなって、細胞は死んでしまいます。リボソームは真核生物(人間)の細胞にも、原核生物(細菌)の細胞にも存在しますが、大きさと形が異なります。真核生物は60S, 40Sという大きさ、原核生物は50S, 30Sという大きさのサブユニットを持っています(参考: 生命の重要な機構である「リボソーム」 | 株式会社A&T)。

ですので50S, 30Sのサブユニットだけを妨害するような物質を使えば、細菌のみ攻撃して退治できるという寸法です。賢い戦略ですよね。

しかし世の中はそう単純ではなく、真核生物は細胞内にミトコンドリアを持っています。ミトコンドリアは酸素を使いエネルギーを生成するための、非常に大事な器官です。ミトコンドリアは少々変わった器官で、太古の昔に真核生物の細胞内に共生した細菌(リケッチアに近い種類)が祖先と考えられています。

細菌が先祖のミトコンドリアは、細菌と似たようなリボソームを持っています。そのため抗生物質が間違ってミトコンドリアのリボソームまで攻撃してしまい、人間の具合まで悪くなる(=抗生物質の副作用)原因となっているそうです。

真核生物の中に原核生物が融合しているなんて、何とも場当たり的でムチャクチャに思えますが、ムチャクチャなのに驚きの精密な機構があったりして、生物って面白いですね。

編集者:すずき(2019/06/09 15:04)

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2019年6月7日

東京の不思議な水道

東京の水道は他の地域に比べるとちょっと変わっています。

水道のことは「東京都」水道局に連絡しますよね?東京以外、例えば以前住んでいた高槻では「高槻市」水道部に連絡します。「大阪府」ではないのです。

水道法は水道を市町村レベルで管理、運営することを定めています(水道法 第六条の2)。特別区(東京23区)については下記規定があり、東京都が管理するものと定められています。

第四十九条
特別区の存する区域においては、この法律中「市町村」とあるのは、「都」と読み替えるものとする。

しかし東京都は23区以外も、武蔵野市、昭島市、羽村市及び檜原村を除いて「東京都」が全ての市町村の水道を管理します。これはかなり変わった運用形態だと思います。

経緯はリンク先(多摩の水道 | 水道事業紹介 | 東京都水道局 - 多摩水道について)にさらっと書かれています。超人口密集地だと、水道一つとっても苦労が多いんですね……。

メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。

編集者:すずき(2019/06/09 11:03)

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2019年6月8日

東京のおいしい水

普段、蛇口から出てくる水道水をグイグイ飲んでいますが、特に味や臭いが気になることはありません。以前、つくばに住んでいた時は水道水から異臭がしていたので、天と地の差です。

どこの水か気になったので、調べていたら、東京都水道局がとても便利なサイトを提供してくれていました(配水系統〜ご家庭の水道水情報 | 水源・水質 | 東京都水道局)。住所を入力すると、配水している浄水場、水質検査の結果を見ることができます。

我が家は大田区の東、つまり羽田空港側です。サイトで調べると三郷浄水場から水が来ているようです。家から30kmくらい離れてます。埼玉からはるばるお疲れ様です……。

水源は江戸川で、水質の良い川ではありませんが、その分浄水場が頑張っていて(高度浄水設備を備えている)、浄水後の水質はかなり良いようです。

メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。

編集者:すずき(2019/06/09 11:14)

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2019年6月9日

広域水道事業

Facebookで都道府県営水道は東京だけではないと教えていただきました。

以前(2019年6月7日の日記参照)書いたように、水道は基本的には市町村が運営するものです。市町村で維持が難しくなった水道事業を都道府県が引き取る形になっているせいか、各県ごとに運営形態も提供範囲もバラバラです。

全ての都道府県を全て調べるのは大変なので、人口の多そうな都道府県を中心に水道事業の統合について、調べてみました。

神奈川県: 企業局 水道部経営課
横浜市、川崎市を除く西部ほぼ全域
県営水道の給水区域 - 神奈川県ホームページ
千葉県: 企業局
県営ではなく、市町村がいくつか協力し企業団(※1)を形成
千葉県内の各水道事業体のご案内 / 千葉県
愛知県: 企業庁 水道事業課
県営水道と企業団(※2)の複合で、名古屋市、東部一部地域を除く全域
事業概要(水道用水供給事業) - 愛知県
大阪府: 大阪広域水道企業団(府営水道を引き継いだ)
泉南、北部の一部市町村
大阪府域の水道の広域化について | 大阪広域水道企業団
京都府: 京都府営水道事務所、府民環境部公営企画課
南部の人口密集地
水道事業のあらまし / 京都府ホームページ

東京以外にも色々なところでやっていますね。共通しているのは人口が多い、供給面積が広い、ダムから遠く水源がないなど、1市町村で水道を賄えなくなっていることでしょうか。

今まで住んだことのある市町村は、偶然いずれも広域水道に入っていませんでした。つまり田舎ばかりだったということか……?

※1: 千葉県の水道企業団
九十九里地域水道企業団(匝瑳市、東金市、茂原市、横芝光町、大網白里市、九十九里町、山武市、一宮町、睦沢町、長生村、白子町、長柄町、長南町)
北千葉広域水道企業団(千葉県水道局、松戸市、野田市、柏市、流山市、我孫子市、習志野市、八千代市)
東総広域水道企業団(銚子市、旭市、東庄町)
君津広域水道企業団(千葉県水道局、木更津市、君津市、富津市、袖ケ浦市)
印旛郡市広域市町村圏事務組合水道企業部(成田市、佐倉市、四街道市、酒々井町、八街市、印西市、白井市)
南房総広域水道企業団(館山市、勝浦市、鴨川市、大多喜町、いすみ市、御宿町、鋸南町、南房総市、三芳(企))

※2: 愛知県の水道企業団
愛知中部水道企業団(豊明市・日進市・みよし市・長久手市・東郷町)
北名古屋水道企業団(北名古屋市・豊山町)、丹羽広域事務組合(大口町・扶桑町)
海部南部水道企業団(愛西市・弥富市・飛島村)

メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。大幅加筆した。

編集者:すずき(2019/08/26 00:09)

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