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2020年1月20日

glibcのmemsetのクセ

目次: ベンチマーク

先日memsetを書いていたとき(2020年1月12日の日記参照)に気づいたのですが、glibcのフルアセンブラ版memsetの性能が2通り(遅い、速い)あることに気づきました。だいたい1割くらい性能が変わります。

遅いときと比較すると、自作のmemsetの方が速いですが、速いときと比較するとボロ負けします。割と性能が迫っているためか、影響が大きいです。

何が違うんでしょうね?コードは当然同じですから、違いはmemset関数のロードされるアドレスくらいです。まさかなと思って、スタティックリンクしたら安定して速くなりました。

ダイナミックリンクだと、アプリ側は0xaaaac4fba560で、glibcだけ0xffffbf2dce00のような遠いアドレスに飛ばされます。ベンチマーク中は、アプリのコード ←→ glibcのコードを頻繁に行き来することになるので、TLBミスヒットの影響が出ているんですかね……??

真因はわかりませんが、アドレスが関係している可能性は高いです。今後、似たようなことをやるときは、スタティックリンクで測った方が良さそうです。

編集者:すずき(2023/09/24 08:55)

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2020年1月19日

バイトをコピーするSIMD命令

目次: ベンチマーク

最近、見かけるSIMD命令セット(AVXもNEONも)には、レジスタ下位 [7:0] の1バイトを、レジスタ上位 ... [31:24] [23:16] [15:8] の各バイトに配る命令が用意されています。

  • AVX: vpbroadcastb
  • NEON: dup

この命令はどういう需要があるんだろうか……?memsetの実装では超役に立ちましたが、他の使い道が良くわかりません。

Facebookで上記の話をしていたところ、

  • 8bit行列演算: 8bit行列演算ってそんな頻出かな、って思ったら、画像使えば8bitなので十分有り得そう。
  • バイト暗号: ブロック毎に空間変換する時とか雑に言えばスカラとベクトルの演算。

と教えてもらいました。なるほど、スカラベクトル積のスカラ側を配るときに便利ですね。

SIMD命令のない世界

ちなみにSIMDのない処理系はどうしているのか見てみると、


int a = (何かの数字);

としたときに、


a &= 0xff;
a *= 0x01010101;

のようにand, mov, mulを使っていました。もちろん、


a &= 0xff;
a |= a << 8;
a |= a << 16;

のようにand, shift, or, shift, orでもできますが、今日日のプロセッサだと整数乗算の方が速そうですね。

編集者:すずき(2023/09/24 08:55)

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2020年1月12日

ぼくの考えた最強のmemset

目次: ベンチマーク

NEON intrinsicを使って自分でmemsetを実装してみました。ざっくりした設計方針としては、

  • NEON store (128bit) x 2で32バイトずつ書く
  • 端数25〜バイトはNEON store x 2
  • 端数16〜バイトはNEON store + uint64 store

相手は汎用実装ですし、Cortex-A72に特化した実装なら楽勝だろう、などと考えて始めましたが、甘かった。glibcのフルアセンブラ版はかなり手ごわいです。


自作memsetの測定結果(Cortex-A72)

グラフの赤い線が、自作したmemsetの性能です。

最適化レベルO3のsimple memsetにはほぼ全域で勝てますが、サイズが小さいときのmuslは強い(サイズが小さい場合から判定しているから?)です。glibcのフルアセンブラもかなり強いです。測定によって勝ったり負けたりな程度です。

全然最強じゃなかった……

設計が甘すぎたことがわかったので、下記のように見直しました。

  • 少ないバイト数の条件から判定
  • NEON store (128bit) x 2で32バイトずつ書く
  • 端数バイトはNEON store(分岐を減らした)

序盤でmusl memsetに負けていたのは、バイト数の条件判定の順序が良くなかった(大きいサイズから判定していた)ためなので、1番目で対策しています。2番目と3番目の方針は良いとも悪いとも一概に言えませんが、RK3399だとこれが一番性能が出ました。


自作memset改善後の測定結果(Cortex-A72)

設計意図通りにmuslの序盤(特に高速な1〜8バイト付近)と、glibcフルアセンブラの序盤(1〜32バイト)には勝てたものの、glibcフルアセンブラ版は中盤以降が強く、33バイト以降は全く勝てません。

私の作ったmemsetは32バイトまでは専用処理で、33バイトからループで処理するようになるので、33バイトから性能がかなり落ちます。

おそらくglibcフルアセンブラ版も同様に16バイトから性能が落ちるので、ループ処理していると思うんですが、それ以降の巻き返しが凄くて、33バイト以降はまったく勝てないですね……。どうやってんだろうね、これ?

コンパイラが変なandとかsubを出力しているのを見つけたので、アセンブラでも実装してみましたが、性能はほぼ変わりませんでした。設計の根底が違うんでしょうね。

Cortex-A53だと全く勝ち目無し

RK3328(Cortex-A53)で測ってみると、muslには勝てますが、glibcフルアセンブラ版には勝ち目無しで、ほぼ全域に渡ってボコボコにされます。


自作memset改善後の測定結果(Cortex-A53)

基本設計が「余計なwriteをしてでも、とにかく速く終われ」なので、writeを正直に実行してしまうようなヘボいプロセッサになればなるほど勝ち目が薄いです。

編集者:すずき(2023/09/24 08:55)

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2020年1月11日

memsetに一番効く最適化

目次: ベンチマーク

Cortex-A72でのmemsetはO2に-ftree-vectorizeと -fpeel-loopsを足すと、O3の性能とほぼイコールになることがわかりました。


gcc -O2 -ftree-vectorize -fpeel-loops -fno-builtinの測定結果(Cortex-A72)

元の処理が非常に単純なループ処理のためか、ループ系の最適化がメチャクチャ効くっぽいです。

何が効くのか?

GCCのGIMPLEを出力させ(-fdump-tree-all)眺めてみると、

オリジナル
1バイトごとにデータ処理するループが生成される。
ベクタライズ(161t.vect)
16バイトごとにデータ処理するループと、1バイトごとに残りデータを処理するループに分割される。
アンローリング(164t.cunroll, 169t.loopdone)
残りデータを処理するループが展開される。

こんな感じに見えます。正直言って、ループアンローリングなんて大したことないと思っていましたが、これほど効くとは思いませんでした。

メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。大幅に追記。

編集者:すずき(2023/09/24 08:55)

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