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2019年10月14日

linux-nextの不思議なバージョン情報

Linuxというかlinux-nextですが、リポジトリ内のファイルをオリジナルから変更してビルドした場合、バージョン情報の最後に -dirtyが付きます。あれはどうやっているのだろう??と気になりました。

Makefileを眺めていると、scripts/setlocalversionというスクリプトでローカルバージョンを付与しているように見えます。

試しにcleanなリポジトリでscripts/setlocalversionを実行すると、-next-20191009のようなlocalversionのみ(※)が表示され、ファイルを適当に書き換えてから実行すると、-next-20191009-dirtyになりました。このスクリプトで当たりっぽいです。

もしLinux Upstreamカーネルで試す場合は、CONFIG_LOCALVERSION_AUTOをyにして、make prepareを実行する必要があります。そうしないとscripts/setlocalversionを実行しても "+" しか表示されません。

(※)この文字列はトップディレクトリのlocalversion-nextというファイルに書いてあります。

Gitの小技、リポジトリ変更を検知

スクリプトsetlocalversionを追いかけてみるとgit --no-optional-locks status -uno --porcelainで変更を検知して、-dirtyを出力するかどうか決めていました。オプション --porcelainのヘルプを見ると「スクリプトなどで処理しやすい形式でstatusを出力する」とのことです。へえー、こんなのあるんだ。初めて知りました。

オプション --no-optional-locksはロックを取らずに実行するという意味です。ヘルプ曰く、バックグラウンドでstatusを実行する際に、他のgit statusプロセスと衝突するので、指定した方が良いとのこと。手動で使うことはなさそうだし、気にしなくて良いでしょう。

オプション-unoは --untracked-files=noの省略形です。効果は実際に見た方が早いです。以下をご覧ください。

Gitリポジトリに変更を加える
#### scripts/setlocalversionを書き換え

$ vim scripts/setlocalversion

#### 未追跡ファイルaaaを作成

$ touch aaa

上記の変更を加えたうえで、オプション -unoなし、オプション -unoありで、それぞれ実行してみます。

Gitリポジトリに変更が生じているか取得する(-unoなし、あり)
$ git status --porcelain

 M scripts/setlocalversion
?? aaa


$ git status -uno --porcelain

下記と同じ

$ git status --untracked-files=no --porcelain

 M scripts/setlocalversion

見た目で明らかだとは思いますが、オプション -unoが指定されていない場合は、未追跡のファイルaaaも表示されますが、-unoを指定すると未追跡のファイルは無視します。

スクリプト内でGitリポジトリが変更されたか?されていないか?を判定する必要は、普通の人はほぼ無いと思うんですけど……、もし必要が生じたら、sedとかgrepとかでゴチャゴチャやらずに、オプション --porcelainを使いましょう。

編集者:すずき(2019/10/21 02:35)

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2019年10月13日

Gitの小技、コミットID取得

最近、会社でCI/CDで自動化のマネごとを始めました。といっても大したことはなくて、ビルドしてDebianやRPMパッケージを作って、Webサーバーにぶっこむだけです。

Nightlyビルドのパッケージを作成する際に、パッケージ名の最後にGitのコミットIDを付加しようと思ったのですが、方法が分かりません。調べてみるとrev-parseというコマンドを使うそうです。知らなかった。

GitのコミットID(全体、短縮)を取得する
$ git rev-parse HEAD

5ab7d0ae0c170fc0409d564fe945aac5ce54f86c

$ git rev-parse --short HEAD

5ab7d0ae0c1

ID全部だと長すぎるため --shortオプションを使うとより良いです。

編集者:すずき(2019/10/21 02:02)

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2019年10月12日

台風19号

あの台風15号(Faxai)(2019年9月8日の日記参照)を超える、かつてない規模の台風19号(Hagibis)が来るということで、窓にガラス飛散防止でダンボールを貼ってみたり、食料、水を買い込んで備えていました。

都内だと多摩川沿いの一部堤防のない地域が水浸し、東日本だと長野、宮城が洪水で大変なことになっているそうで、東京の治水事業には感謝しかありません。


多摩川の水位

我が家からはやや遠いですが、最寄りの大きな川といえば多摩川です。水位が大変なことになっていて、思わずスクリーンショットを撮ってしまいました……。

我が家は北と東に窓がありまして、台風15号のときは北からガンガン風と雨が吹き付けていたため、あまりの風圧に、雨が窓サッシの隙間から侵入していました。壁に飛来物が当たり、ものすごい音もしていました(窓の真横に当たり、窓にはギリギリ当たらず本当に幸運だった)。今回はどうやら西、ないし、南から吹き付けていたようで、15号のときほど被害はありませんでした。

今回は全体的に幸運でしたが、災害への備えは日頃からやっておいて損はないですね。

家財

家の外にある家財は車くらいしかないので、台風が過ぎた後に見に行ってみましたが、特に飛来物が当たった形跡もなく、何ともなかったです。良かった良かった。

編集者:すずき(2019/10/24 01:35)

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2019年10月6日

RISC-Vのバイナリダンプを逆アセンブルする

目次: RISC-V

相変わらず空き時間にRISC-Vのエミュレータを書いています。RV64IMACくらいが必要なのですが、意外と命令の種類が多くていっぺんにやるのは面倒なので、HiFive Unleashedのファームウェアを動かしてみて、足りない命令から実装していくスタイルで開発しています。

HiFive Unleashedの電源を入れたときに真っ先に起動してくるファームウェアというかブートローダはZSBL(Zeroth Stage Boot Loader), FSBL(First Stage Boot Loader)という名前です。

なんと親切なことにソースコードが公開されていますGitHub - Freedom U540-C000 Bootloader Codeのリンク)。素晴らしいですね……。

なぜかUnleashedから引っこ抜いてきたバイナリと、手元でコンパイルしたZSBL, FSBLのバイナリが一致しません。何か間違っているのかも?ちょっと気になります。しかしながら、ソースコードが公開されている意義は非常に大きいです。

メモリマップも公開されています。SiFive Freedom U540 SoCのサイトからダウンロードできます。

Unleashedリセット〜ZSBLを例に解説

U540のマニュアルによると、リセット直後のPCは0x1004で、その後はMSELの値を見て、適切な場所に飛ぶとあります。MSELというのは、Unleashedボード上のDIPスイッチのことです。購入後、変えていなければ状態だと全部ON、つまり0xfになっていると思います。

リセット直後に実行される領域の周辺バイナリをダンプしてみましょう。ダンプには拙作のmemaccess(GitHubへのリンク)を使っています。

Unleashed 0x1000〜0x1040領域のダンプ
# ma db 0x1000 0x40
00001000  0f 00 00 00 97 02 00 00  03 a3 c2 ff 13 13 33 00
00001010  b3 82 62 00 83 a2 c2 0f  67 80 02 00 00 00 00 00
00001020  00 00 00 00 00 00 00 00  00 00 00 00 00 00 00 00
00001030  00 00 00 00 00 00 00 00  00 00 00 00 00 00 00 00
00001040

何かが書いてあるようですが、RISC-Vのバイナリがスラスラ読めるほど達人ではないので、ファイルにダンプして逆アセンブルします。

Unleashed 0x1000〜0x1040領域の逆アセンブル
$ riscv64-unknown-elf-objdump -EL -D -b binary -m riscv:rv64 --adjust-vma=0x1000 reset.bin
reset.bin:     file format binary

Disassembly of section .data:

0000000000001000 <.data>:
    1000:       0000000f                fence   unknown,unknown
    1004:       00000297                auipc   t0,0x0
    1008:       ffc2a303                lw      t1,-4(t0) # 0x1000
    100c:       00331313                slli    t1,t1,0x3
    1010:       006282b3                add     t0,t0,t1
    1014:       0fc2a283                lw      t0,252(t0)
    1018:       00028067                jr      t0
        ...

先頭が変な命令に見えますが、これは命令ではなくMSELです。値は先程も言ったとおり0xfです。実行されるのは0x1004からです。大した量でもないし、1行毎に見ていきます。

0x1004: auipc t0, 0x0
PC + 0をt0にロードします。t0: 0x1004です。
0x1008: lw t1,-4(t0) # 0x1000
レジスタt1にアドレスt0 - 4 = 0x1004 - 4 = 0x1000つまりMSELをロードします。t1: 0xfです。
0x100c: slli t1,t1,0x3
レジスタt1を3ビット左シフト(= 8倍)します。t1: 0xf << 3 = 0x78です。
0x1010: add t0,t0,t1
レジスタt0とt1を足します。t0: です。t0: 0x1004 + 0x78 = 0x107cです。
0x1014: lw t0,252(t0)
レジスタt0にt0 + 252のアドレスからロードします。アドレスは0x107c + 252 = 0x1178です。後述のとおりt0: 0x10000です。
1018: jr t0
レジスタt0のアドレスにジャンプします。すなわち0x10000にジャンプします。

参考として、アドレス0x1178に何が書いてあるか示しておきます。付近の領域0x1100〜0x1180にはMSELの値に応じたジャンプ先のアドレスが書いてあります。MSELが他の値になったらどこにジャンプするか、眺めてみると面白いかと思います。

Unleashed 0x1000〜0x1040領域のダンプ
# ma dd 0x1100 0x80
00001100  00001004 00000000  20000000 00000000
00001110  30000000 00000000  40000000 00000000
00001120  60000000 00000000  00010000 00000000
00001130  00010000 00000000  00010000 00000000
00001140  00010000 00000000  00010000 00000000
00001150  00010000 00000000  00010000 00000000
00001160  00010000 00000000  00010000 00000000
00001170  00010000 00000000  00010000 00000000    ★0x1178には0x10000が書いてある
00001180

マニュアルの言うとおり、MSELが0xfの場合、リセット後ZSBLにジャンプ、アドレスで言うと0x10000にジャンプすることが確認できました。

以降も同様に0x10000付近をダンプし、逆アセンブルしたり、エミュレータに実行させてみたりして、開発を進めています。今はZSBLは通過して、FSBLの先頭の方まで実行できるようになりました。いうなれば、砂山にトンネルを掘っているような気分でしょうか、なかなか面白いです。

通常は逆アセンブルだけだと処理の意図を掴むことが難しいですけども、その点U540はソースコードが読めるため、当たりを付けることが比較的容易です。しばらくは素敵なおもちゃになりそうなボードです。

編集者:すずき(2021/06/28 15:26)

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