RTC
Section: Linux Programmer's Manual (4)
Updated: 2017-09-15
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名前
rtc - リアルタイムクロック
書式
#include <linux/rtc.h>
int ioctl(fd, RTC_request, param);
説明
これはリアルタイムクロック (RTC) のドライバのインターフェースである。
多くのコンピュータは、現在の「壁時計」時刻 ("wall clock" time) を記録する、 ハードウェアクロックを 1 個以上持っている。
これらは「リアルタイムクロック」(RTC) と呼ばれる。 これらの時計のうち 1 つは、通常は電池でバックアップして駆動されるので、
コンピュータのスイッチを切っても、時刻を保持できる。 多くの場合、RTC はアラームやその他の割り込みの機能を提供する。
全ての i386 PC と ACPI ベースのシステムには RTC がある。 この RTC は、元々の PC/AT に存在した Motorola
MC146818 チップと互換性がある。 このような RTC は、今日ではマザーボードの チップセット (サウスブリッジ)
内で実装されていることが多く、 交換可能な硬貨くらいの大きさのバックアップ電池を使っている。
システムオンチップ (system-on-chip) プロセッサを使って作られた 組み込みシステムといった、PC
以外のシステムでは、別な実装を用いている。 このようなシステムでは、PC/AT の RTC と同じ機能を提供していない場合が多い。
RTC とシステムクロックの違い
RTC をシステムクロックと混同すべきではない。 システムクロックは、カーネルに管理されるソフトウェアクロックであり、
ファイルによるタイムスタンプ設定などとともに、 gettimeofday(2) や time(2) を実装するのに使用されている。
システムクロックは、POSIX における紀元 (Epoch; 1970-01-01 00:00:00 +0000 (UTC)) からの秒とミリ秒を表す。
1 つの一般的な実装ではタイマー割り込みを、"jiffy" 毎に 1 回、 100, 250, 1000 Hz という周波数でカウントする。
RTC とシステムクロックの重要な違いは、 RTC はシステムが低電力状態 (「オフ」の場合も含む) でも動作するのに対し、
システムクロックは動作しない点である。 システムクロックは、初期化が行われるまでは、 POSIX
紀元からではなくシステムのブート時からの時刻しか返せない。 そのため、ブート時やシステムの低電力状態からの復帰 (resume) 後には、
システムクロックは RTC を使って現在の壁時計時刻に設定される場合が多い。 RTC を持たないシステムでは、
他の時計を使ってシステムクロックを設定する必要があり、 ネットワークにアクセスしたり、(時刻) データを手動で入力したりするだろう。
RTC の機能
RTC は hwclock(8) または下記の ioctl(2) リクエストで読み書きができる。
日付と時間をカウントするのに加えて、 多くの RTC は以下のように割り込みを発生できる。
- *
-
クロックの更新毎 (つまり 1 秒毎)。
- *
-
2 Hz から 8192 Hz までの 2 の乗数の周波数で、定期的な間隔。
- *
-
前もって指定したアラーム時刻に達した時。
これらの割り込み元は、個別に有効にしたり無効にしたりできる。 多くのシステムでは、アラーム割り込みをシステムの ウェイクアップイベントとして設定できる。
このイベントは、RAM へのサスペンド (STR, ACPI システムで S3 と呼ばれる) や ハイバーネーション (ACPI システムで S4
と呼ばれる) といった低電力状態や、 「オフ」(ACPI システムで S5 と呼ばれる) からでも、システムを復帰できる。 電池でバックアップされた
RTC が割り込みを発生できるシステムと、 できないシステムがある。
/dev/rtc (または /dev/rtc0, /dev/rtc1 などの) デバイスは (クローズされるまで) 1
回しかオープンすることができず、 読み込み専用である。 read(2) と select(2) を呼び出したプロセスは、 RTC
からの割り込みを受け取るまで停止 (block) される。 割り込みの後、プロセスは long 型整数を読み出すことができる。
この整数の最下位バイトは発生した割り込みの種別を コード化したビットマスクであり、 残りの 3 バイトは最後の read(2)
以降に発生した割り込みの回数である。
ioctl(2) インターフェース
以下の ioctl(2) リクエストが RTC デバイスの接続された ファイルディスクリプターに対して定義されている:
- RTC_RD_TIME
-
RTC の時刻を以下の構造体で返す:
-
struct rtc_time {
int tm_sec;
int tm_min;
int tm_hour;
int tm_mday;
int tm_mon;
int tm_year;
int tm_wday; /* 未使用 */
int tm_yday; /* 未使用 */
int tm_isdst; /* 未使用 */
};
-
この構造体のフィールドは gmtime(3) で説明されている tm 構造体のフィールドと同じ意味で同じ範囲である。
この構造体へのポインターを ioctl(2) の第 3 引数として渡す。
- RTC_SET_TIME
-
ioctl(2) の第 3 引数が指す rtc_time 構造体の値を RTC 時刻に設定する。 RTC
時刻の設定する場合、プロセスは特権 (つまり CAP_SYS_TIME ケーパビリティ) を持たなければならない。
- RTC_ALM_READ, RTC_ALM_SET
-
アラームがサポートされている RTC に対して、 アラーム時刻の読み込みと設定を行う。 アラーム割り込みは、 RTC_AIE_ON,
RTC_AIE_OFF を使って、これとは別に有効または無効にしなければならない。 ioctl(2) の第 3 引数は、
rtc_time 構造体へのポインターでなければならない。 この構造体の tm_sec, tm_min, tm_hour
フィールドのみが使用される。
- RTC_IRQP_READ, RTC_IRQP_SET
-
周期的な割り込みがサポートされている RTC に対して、 周期的な割り込みの周波数の読み込みと設定を行う。 周期的な割り込みは、
RTC_PIE_ON, RTC_PIE_OFF を使って、これとは別に有効または無効にしなければならない。 ioctl(2) の第 3
引数は、それぞれ unsigned long * と unsigned long である。 この値は 1 秒当たりの割り込みの回数である。
指定可能な周波数は、2 の乗数で 2 から 8192 の範囲である。 特権プロセス (つまり CAP_SYS_RESOURCE
ケーパビリティを持つプロセス) のみが、 /proc/sys/dev/rtc/max-user-freq に書かれた上記の周波数を設定できる。
(このファイルにはデフォルトで 64 という値が書かれている)。
- RTC_AIE_ON, RTC_AIE_OFF
-
アラームがサポートされている RTC に対して、 アラーム割り込みを有効または無効にする。 ioctl(2) の第 3 引数は無視される。
- RTC_UIE_ON, RTC_UIE_OFF
-
1 秒毎の割り込みがサポートされている RTC に対して、 クロック更新毎の割り込みを有効または無効にする。 ioctl(2) の第 3
引数は無視される。
- RTC_PIE_ON, RTC_PIE_OFF
-
周期的な割り込みがサポートされている RTC に対して、 周期的な割り込みを有効または無効にする。 ioctl(2) の第 3 引数は無視される。
特権プロセス (つまり CAP_SYS_RESOURCE ケーパビリティを持つプロセス) のみが、 その時点で
/proc/sys/dev/rtc/max-user-freq に周期が上記の値に指定されている場合に、 周期的な割り込みを有効にできる。
- RTC_EPOCH_READ, RTC_EPOCH_SET
-
多くの RTC は年を 8 ビットのレジスターにコード化する。 年は 8 ビットのバイナリ数または BCD 数に変換される。
どちらの場合でも、その数値は RTC の紀元から相対値に変換される。 多くのシステムでは RTC の紀元は 1900 に初期化されるが、 Alpha と
MIPS では、RTC レジスターの年の値に応じて、 1952, 1980, 2000 の何れかに初期化される。 これらの操作でそれぞれ RTC
の紀元の読み込みと設定が可能な RTC もある。 ioctl(2) の第 3 引数は、それぞれ unsigned long * と
unsigned long である。 返される値 (または指定される値) は紀元である。 RTC の紀元を設定する場合、プロセスは特権 (つまり
CAP_SYS_TIME ケーパビリティ) を持たなければならない。
- RTC_WKALM_RD, RTC_WKALM_SET
-
RTC の中にはより強力なアラームインターフェースをサポートするものもあり、 これらの ioctl を使うことで、以下のような構造体で RTC
のアラーム時刻を (それぞれ) 読み書きできる:
-
struct rtc_wkalrm {
unsigned char enabled;
unsigned char pending;
struct rtc_time time;
};
-
enabled フラグはアラーム割り込みを有効または無効したり、 現在の状態を読み込むのに使用される。 これらのフラグを使う場合、
RTC_AIE_ON と RTC_AIE_OFF は使用されない。 pending フラグは RTC_WKALM_RD
で使用され、処理待ちの割り込みを表示する (EFI ファームウェアで管理される RTC と通信するとき以外、 Linux ではほとんど役に立たない)。
time フィールドは RTC_ALM_READ や RTC_ALM_SET の場合と同じように使用されるが、 tm_mday,
tm_mon, tm_year フィールドも有効であるという点が異なる。 この構造体へのポインターを ioctl(2) の第 3
引数として渡さなければならない。
ファイル
- /dev/rtc, /dev/rtc0, /dev/rtc1 など。
-
RTC 特殊キャラクターデバイスファイル。
- /proc/driver/rtc
-
(1 つ目の) RTC の状態
注意
カーネルのシステムクロックを adjtimex(2) を使って外部参照で同期させる場合、 adjtimex(2) は指定された RTC
を 11 分毎に定期的に更新する。 これを行うためカーネルは周期的な割り込みを短期間無効にする必要がある。 これは RTC
を使うプログラムに影響を与える。
RTC の紀元は、システムクロックでのみ使用される POSIX の紀元とは何の関係もない。
RTC の紀元と年のレジスターに基づく年が 1970 未満である場合、 100 年後、つまり 2000 から 2069 であると仮定される。
RTC の中にはアラームフィールドに 「ワイルドカード」の値をサポートするものもあり、 毎時 15
分や各月の初日など、定期的なアラームを行うシナリオをサポートする。 このような使い方は移植性がない。
移植性の高いユーザー空間コードでは、単独のアラーム割り込みだけを想定し、 割り込みの受信後にアラームを無効または再初期化すべきである。
以下の機能をサポートする RTC もある。 1 秒の分数ではなく、1 秒の倍数を周期とする周期的な割り込み。 複数のアラーム。
プログラム可能な出力クロックシグナル。 不揮発性 (nonvolatile) メモリー。 この API で現在提供していない、その他のハードウェア機能。
関連項目
date(1), adjtimex(2), gettimeofday(2), settimeofday(2),
stime(2), time(2), gmtime(3), time(7), hwclock(8)
Linux カーネルソース内の Documentation/rtc.txt
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
Index
- 名前
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- 書式
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- 説明
-
- RTC とシステムクロックの違い
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- RTC の機能
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- ioctl(2) インターフェース
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- ファイル
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- 関連項目
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