RTNETLINK
Section: Linux Programmer's Manual (7)
Updated: 2020-06-09
Index
JM Home Page
roff page
名前
rtnetlink - Linux IPv4 ルーティングソケット
書式
#include <asm/types.h>
#include <linux/netlink.h>
#include <linux/rtnetlink.h>
#include <sys/socket.h>
rtnetlink_socket = socket(AF_NETLINK, int socket_type,
NETLINK_ROUTE);
説明
rtnetlink はカーネルのルーティングテーブルを読んだり変更したり するためのものである。これはカーネルが内部のサブシステムと
通信するためにも用いられているが、それはここでは記述しない。 この man ページではユーザー空間のプログラムとの通信に関してのみ述べる。
ネットワーク経路・IP アドレス・リンクパラメーター・ 近傍設定 (neighbor setup)・キューイングルール (queueing
dicipline)・ トラフィッククラス・パケットのクラス分類などが、すべて NETLINK_ROUTE ソケットを通して制御できる。
rtnetlink は netlink メッセージをベースにしている。詳細は netlink(7) を見ること。
ルーティング属性
rtnetlink メッセージには、初期ヘッダーの後に付加的な属性を 持つものがある。
struct rtattr {
unsigned short rta_len; /* Length of option */
unsigned short rta_type; /* Type of option */
/* Data follows */
};
これらの属性の操作は、 RTA_* マクロか libnetlink のみを使って行うべきである。 rtnetlink(3) を見よ。
メッセージ
rtnetlink は (標準的な netlink メッセージに加えて) 以下のメッセージタイプから構成される。
- RTM_NEWLINK, RTM_DELLINK, RTM_GETLINK
-
指定したネットワークインターフェースの情報を、生成・削除・取得する。 これらのメッセージは ifinfomsg 構造体と、それに続いていくつかの
rtattr 構造体を伴う。
-
struct ifinfomsg {
unsigned char ifi_family; /* AF_UNSPEC */
unsigned short ifi_type; /* Device type */
int ifi_index; /* Interface index */
unsigned int ifi_flags; /* Device flags */
unsigned int ifi_change; /* change mask */
};
-
ifi_flags はデバイスのフラグである。 netdevice(7) を参照。 ifi_index
は他と重ならないインターフェースの index である (Linux 3.7 以降では、 RTMGRP_LINK メッセージで 0
以外の値を指定することができ、そのため指定した ifindex でリンクを作成できる)。 ifi_change
は将来の利用のために予約されており、常に 0xFFFFFFFF にセットすべきである。
ルーティング属性
|
rta_type | 値の型 | 説明
|
|
IFLA_UNSPEC | - | 指定されていない
|
IFLA_ADDRESS | hardware address | インターフェース L2 アドレス
|
IFLA_BROADCAST | hardware address | L2 ブロードキャストアドレス
|
IFLA_IFNAME | asciiz string | デバイス名
|
IFLA_MTU | unsigned int | デバイスの MTU
|
IFLA_LINK | int | リンクタイプ
|
IFLA_QDISC | asciiz string | キューイングのルール
|
IFLA_STATS |
下記参照
| インターフェースの統計
|
-
IFLA_STATS の値の型は struct rtnl_link_stats (Linux 2.4 以前では struct
net_device_stats) である。
- RTM_NEWADDR, RTM_DELADDR, RTM_GETADDR
-
インターフェースの IP アドレスの情報を追加・削除・取得する。 Linux 2.2 では、一つのインターフェースに複数の IP アドレスを
保持させることができ、これは 2.0 の別名デバイスの概念を置き換える。 Linux 2.2 では、これらのメッセージは IPv4 と IPv6
の両方のアドレスをサポートしている。 これらは ifaddrmsg 構造体を伴う。そのあとに rtattr
ルーティング属性が続くこともある。
-
struct ifaddrmsg {
unsigned char ifa_family; /* Address type */
unsigned char ifa_prefixlen; /* Prefixlength of address */
unsigned char ifa_flags; /* Address flags */
unsigned char ifa_scope; /* Address scope */
unsigned int ifa_index; /* Interface index */
};
-
ifa_family はアドレスファミリーのタイプである (現在は AF_INET または AF_INET6)。
ifa_prefixlen はアドレスのアドレスマスクの長さである (IPv4 のように、 そのファミリーで定義されている場合)。
ifa_scope はアドレスのスコープである。 ifa_index はアドレスが関連づけられているインターフェースの index である。
ifa_flags はフラグワードで、 二つめのアドレス (古い別名インターフェース) の場合は IFA_F_SECONDARY
に、永続的なアドレスの場合は IFA_F_PERMANENT に適用される。ユーザーによってセットされるフラグと、 undocumented
なフラグがある。
属性
|
rta_type | 値の型 | 説明
|
|
IFA_UNSPEC | - | 指定されていない
|
IFA_ADDRESS | raw protocol address | インターフェースアドレス
|
IFA_LOCAL | raw protocol address | ローカルアドレス
|
IFA_LABEL | asciiz string | インターフェースの名前
|
IFA_BROADCAST | raw protocol address | ブロードキャストアドレス
|
IFA_ANYCAST | raw protocol address | anycast アドレス
|
IFA_CACHEINFO | struct ifa_cacheinfo | アドレス情報
|
- RTM_NEWROUTE, RTM_DELROUTE, RTM_GETROUTE
-
ネットワーク経路の情報を生成・削除・取得する。 これらのメッセージは rtmsg 構造体を伴う。そのあとにいくつかの rtattr
構造体を続けることもできる。 RTM_GETROUTE で rtm_dst_len と rtm_src_len に 0
をセットすると、 指定されたルーティングテーブルの全てのエントリーを所得する。 rtm_table と rtm_protocol
以外の他のフィールドに 0 を入れると、ワイルドカードを意味する。
-
struct rtmsg {
unsigned char rtm_family; /* Address family of route */
unsigned char rtm_dst_len; /* Length of destination */
unsigned char rtm_src_len; /* Length of source */
unsigned char rtm_tos; /* TOS filter */
unsigned char rtm_table; /* Routing table ID;
see RTA_TABLE below */
unsigned char rtm_protocol; /* Routing protocol; see below */
unsigned char rtm_scope; /* See below */
unsigned char rtm_type; /* See below */
unsigned int rtm_flags;
};
rtm_type | 経路のタイプ
|
|
RTN_UNSPEC | 未知の経路
|
RTN_UNICAST | ゲートウェイまたはダイレクトな経路
|
RTN_LOCAL | ローカルインターフェースの経路
|
RTN_BROADCAST |
ローカルなブロードキャスト経路 (ブロードキャストとして送信される)
|
RTN_ANYCAST |
ローカルなブロードキャスト経路 (ユニキャストとして送信される)
|
RTN_MULTICAST | マルチキャスト経路
|
RTN_BLACKHOLE | パケットを捨てる経路
|
RTN_UNREACHABLE | 到達できない行き先
|
RTN_PROHIBIT | パケットを拒否する経路
|
RTN_THROW | 経路探索を別のテーブルで継続
|
RTN_NAT | ネットワークアドレスの変換ルール
|
RTN_XRESOLVE |
外部レゾルバを参照 (実装されていない)
|
rtm_protocol | 経路の情報源
|
|
RTPROT_UNSPEC | 不明
|
RTPROT_REDIRECT |
ICMP リダイレクトによる (現在は用いられない)
|
RTPROT_KERNEL | カーネルによる
|
RTPROT_BOOT | ブート時
|
RTPROT_STATIC | 管理者による
|
RTPROT_STATIC よりも大きな値はカーネルによって解釈されない。これは 単なるユーザーへの情報である。これらは経路情報の情報源を
タグ付けしたり、複数のルーティングデーモンからの情報を 区別するために用いることができる。 既に割り当てられているルーティングデーモンの識別子については
<linux/rtnetlink.h> を見よ。
-
rtm_scope は行き先への距離である。
RT_SCOPE_UNIVERSE | グローバルな経路
|
RT_SCOPE_SITE |
ローカルな自律システムにおける内部経路
|
RT_SCOPE_LINK | このリンク上の経路
|
RT_SCOPE_HOST | ローカルホスト上の経路
|
RT_SCOPE_NOWHERE | 行き先が存在しない
|
ユーザーは RT_SCOPE_UNIVERSE と RT_SCOPE_SITE の間の値を用いることができる。
-
rtm_flags は以下の意味を持つ:
RTM_F_NOTIFY |
経路が変更されると、 rtnetlink を通してユーザーに通知が行く。
|
RTM_F_CLONED | 経路は他の経路によって複製された。
|
RTM_F_EQUALIZE | マルチパスイコライザ (まだ実装されていない)
|
rtm_table ではルーティングテーブルを指定する。
RT_TABLE_UNSPEC | 指定されていないルーティングテーブル
|
RT_TABLE_DEFAULT | デフォルトのテーブル
|
RT_TABLE_MAIN | メインのテーブル
|
RT_TABLE_LOCAL | ローカルテーブル
|
ユーザーは RT_TABLE_UNSPEC と RT_TABLE_DEFAULT. の間の任意の値を用いることができる。
属性
|
rta_type | 値の型 | 説明
|
|
RTA_UNSPEC | - | 無視される
|
RTA_DST | protocol address | 経路の行き先アドレス
|
RTA_SRC | protocol address | 経路の発信元アドレス
|
RTA_IIF | int | 入力インターフェースの index
|
RTA_OIF | int | 出力インターフェースの index
|
RTA_GATEWAY | protocol address | 経路のゲートウェイ
|
RTA_PRIORITY | int | 経路の優先度
|
RTA_PREFSRC | protocol address | Preferred source address
|
RTA_METRICS | int | 経路のメトリック
|
RTA_MULTIPATH | |
Multipath nexthop data
br
(see below).
|
RTA_PROTOINFO | | No longer used
|
RTA_FLOW | int | Route realm
|
RTA_CACHEINFO | struct rta_cacheinfo | (linux/rtnetlink.h 参照)
|
RTA_SESSION | | No longer used
|
RTA_MP_ALGO | | No longer used
|
RTA_TABLE | int |
Routing table ID; if set,
rtm_table is ignored
|
RTA_MARK | int |
|
RTA_MFC_STATS | struct rta_mfc_stats | (linux/rtnetlink.h 参照)
|
RTA_VIA | struct rtvia |
Gateway in different AF
(see below)
|
RTA_NEWDST | protocol address |
パケットの経路の行き先アドレスを変更する
|
RTA_PREF | char |
RFC4191 IPv6 router
preference (see below)
|
RTA_ENCAP_TYPE | short |
Encapsulation type for
lwtunnels (下記参照)
|
RTA_ENCAP | | Defined by RTA_ENCAP_TYPE
|
RTA_EXPIRES | int |
Expire time for IPv6
routes (in seconds)
|
-
RTA_MULTIPATH contains several packed instances of struct rtnexthop
together with nested RTAs (RTA_GATEWAY):
-
struct rtnexthop {
unsigned short rtnh_len; /* Length of struct + length
of RTAs */
unsigned char rtnh_flags; /* Flags (see
linux/rtnetlink.h) */
unsigned char rtnh_hops; /* Nexthop priority */
int rtnh_ifindex; /* Interface index for this
nexthop */
}
-
There exist a bunch of RTNH_* macros similar to RTA_* and NLHDR_*
macros useful to handle these structures.
-
struct rtvia {
unsigned short rtvia_family;
unsigned char rtvia_addr[0];
};
-
rtvia_addr is the address, rtvia_family is its family type.
-
RTA_PREF may contain values ICMPV6_ROUTER_PREF_LOW,
ICMPV6_ROUTER_PREF_MEDIUM, and ICMPV6_ROUTER_PREF_HIGH defined incw
<linux/icmpv6.h>.
-
RTA_ENCAP_TYPE may contain values LWTUNNEL_ENCAP_MPLS,
LWTUNNEL_ENCAP_IP, LWTUNNEL_ENCAP_ILA, or LWTUNNEL_ENCAP_IP6
defined in <linux/lwtunnel.h>.
-
(これらの値を埋めること!)
- RTM_NEWNEIGH, RTM_DELNEIGH, RTM_GETNEIGH
-
近傍テーブル (neighbor table) のエントリー (例えば ARP エントリー) の情報を追加・削除・取得する。 このメッセージは
ndmsg 構造体を伴う。
-
struct ndmsg {
unsigned char ndm_family;
int ndm_ifindex; /* Interface index */
__u16 ndm_state; /* State */
__u8 ndm_flags; /* Flags */
__u8 ndm_type;
};
struct nda_cacheinfo {
__u32 ndm_confirmed;
__u32 ndm_used;
__u32 ndm_updated;
__u32 ndm_refcnt;
};
-
ndm_state は以下の状態のビットマスクである:
NUD_INCOMPLETE | 現在レゾルブ中のキャッシュエントリー
|
NUD_REACHABLE | 動作確認済みのキャッシュエントリー
|
NUD_STALE | 期限切れのキャッシュエントリー
|
NUD_DELAY | タイマー待ちのキャッシュエントリー
|
NUD_PROBE | 再確認中のキャッシュエントリー
|
NUD_FAILED | 不正なキャッシュエントリー
|
NUD_NOARP | 行き先キャッシュのないデバイス
|
NUD_PERMANENT | 静的なエントリー
|
有効な ndm_flags は以下の通り:
NTF_PROXY | プロクシ arp エントリー
|
NTF_ROUTER | IPv6 ルータ
|
rtattr 構造体は、 rta_type フィールドに応じてそれぞれ以下の意味を持つ:
NDA_UNSPEC | 未知のタイプ
|
NDA_DST | 近傍キャッシュネットワーク層の行き先アドレス
|
NDA_LLADDR | 近傍キャッシュリンク層のアドレス
|
NDA_CACHEINFO | キャッシュの統計
|
rta_type フィールドが NDA_CACHEINFO の場合には、 struct nda_cacheinfo ヘッダーが続く。
- RTM_NEWRULE, RTM_DELRULE, RTM_GETRULE
-
ルーティングルールを追加・削除・取得する。 struct rtmsg を伴う。
- RTM_NEWQDISC, RTM_DELQDISC, RTM_GETQDISC
-
キューイングルールを追加・削除・取得する。 このメッセージは struct tcmsg を伴い、またそのあとに属性がいくつか続くこともある。
-
struct tcmsg {
unsigned char tcm_family;
int tcm_ifindex; /* interface index */
__u32 tcm_handle; /* Qdisc handle */
__u32 tcm_parent; /* Parent qdisc */
__u32 tcm_info;
};
属性
|
rta_type | 値の型 | 説明
|
|
TCA_UNSPEC | - | 指定されていない
|
TCA_KIND | asciiz string | キューイングルールの名前
|
TCA_OPTIONS | byte sequence | Qdisc 特有のオプションが続く
|
TCA_STATS | struct tc_stats | Qdisc の統計
|
TCA_XSTATS | qdisc-specific | モジュール特有の統計
|
TCA_RATE | struct tc_estimator | レート制限
|
さらに、 qdisc モジュール特有の様々な属性を指定できる。 詳細な情報は適切なインクルードファイルを見よ。
- RTM_NEWTCLASS, RTM_DELTCLASS, RTM_GETTCLASS
-
トラフィッククラスを追加・削除・取得する。 これらのメッセージは、上述の struct tcmsg を伴う。
- RTM_NEWTFILTER, RTM_DELTFILTER, RTM_GETTFILTER
-
トラフィックフィルターの情報を追加・削除・取得する。 これらのメッセージは、上述の struct tcmsg を伴う。
バージョン
rtnetlink は Linux 2.2 の新機能である。
バグ
このマニュアルは完全ではない。
関連項目
cmsg(3), rtnetlink(3), ip(7), netlink(7)
この文書について
この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は
https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。
Index
- 名前
-
- 書式
-
- 説明
-
- ルーティング属性
-
- メッセージ
-
- バージョン
-
- バグ
-
- 関連項目
-
- この文書について
-
This document was created by
man2html,
using the manual pages.
Time: 16:46:42 GMT, November 24, 2023