INITRD

Section: Linux Programmer's Manual (4)
Updated: 2019-03-06
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名前

initrd - ブートローダーによって初期化された RAM ディスク  

設定

/dev/initrd は、メジャー番号 1、マイナー番号 250 が割り当てられた 読み込み専用のブロックデバイスである。 普通、 /dev/initrd の所有者は root:disk であり、モードは 400 (root のみが読み出し可能) である。 もし、Linux システムに作成済の /dev/initrd ファイルがなかった場合、以下のコマンドで作成することができる:


 mknod -m 400 /dev/initrd b 1 250 chown root:disk /dev/initrd

また、 /dev/initrd を使用するためには、 "RAM disk" と "Initial RAM disk" の両方の機能が Linux カーネルに直接組み込まれていなければならない (例えば、カーネルのコンパイル時の設定で CONFIG_BLK_DEV_RAM=y かつ CONFIG_BLK_DEV_INITRD=y とする)。 /dev/initrd を使用する場合には、RAM ディスクドライバをモジュールとして ロードすることはできない。  

説明

/dev/initrd スペシャルファイルは読み込み専用のブロックデバイスである。 このデバイスはカーネルが起動される前にブートローダー (boot loader) によって初期化 (例えば、ロード) される RAM ディスクである。 その後、カーネルは /dev/initrd の内容を二段階のシステム起動 (two-phase system boot-up) で利用することができる。

最初のブートアップ段階 (first boot-up phase) では、カーネルは (例えば、ブートローダーによって初期化された RAM disk である) /dev/initrd の内容を初期ルートファイルシステム (root file-system) としてマウント して起動する。 第二段階では初期ルートデバイスに含まれているものから、追加のドライ バやその他のモジュールがロードされる。 追加のモジュールがロードされた後、新しいルートファイルシステム (すなわち、通常時のルートファイルシステム) が別のデバイスからマウントされる。  

ブートアップ作業

initrd を利用した時は、システムは次のようにブートする:
1.
ブートローダーはカーネルプログラムと /dev/initrd の内容をメモリーにロードする。
2.
カーネル起動時、カーネルは /dev/initrd デバイスの内容を展開 (uncompress) し、 /dev/ram0 にコピーする。さらに、 /dev/initrd の使っていたメモリーを解放する。
3.
カーネルは /dev/ram0 デバイスを初期のルートファイルシステムとして読み書き可能な形式でマウン トする。
4.
指示されたルートファイルシステムが初期ルートファイルシステム (例えば /dev/ram0) と同一の場合は、カーネルは普通のブートシーケンスのための最後のステップを 省略する。
5.
/linuxrc という実行可能なファイルが初期ルートファイルシステムに存在すれば、 /linuxrc を UID 0 (すなわち、root) の権限で実行する。 (/linuxrc ファイルは実行可能パーミッションが与えられていなければならない。 /linuxrc は正当な実行ファイルであればよく、シェルスクリプトでも構わない。)
6.
/linuxrc が実行されない、または、 /linuxrc の実行が終了した時は、通常時ルートファイルシステムがマウントされる。 (/linuxrc を終了した時、何らかのファイルシステムが初期ルートファイルシステム上に マウントされている場合のカーネルの動作は 決められていない (不定である)。 現在のカーネルがどのように動作するかは、 「注意」のセクションを参照のこと。)
7.
通常時ルートファイルシステムに ディレクトリ /initrd があれば、 /dev/ram0 デバイスは / から /initrd に移動される。 /initrd ディレクトリが存在しない場合は、 /dev/ram0 はアンマウントされる。 (//initrd に移動された場合には、 /dev/ram0 はアンマウントされず、その結果、 /dev/ram0 で走り始めたプロセスはそのまま残る事ができる。 もし、 /initrd ディレクトリが通常時ルートファイルシステムに存在せず、 /linuxrc が終了した時に /dev/ram0 上で実行された、なんらかのプロセスが走り続けていた場合の カーネルの動作は 決められていない (不定である)。 現在のカーネルが、この時どのような動作をするかについては、 「注意」を参照のこと。)
8.
普通のブートシーケンス (例えば、 /sbin/init の起動) が通常時ルートファイルシステム上で行われる。
 

オプション

initrd を用いる場合に、カーネルのブートアップ操作に影響を与える ブートローダーオプションは次のようなものがある、
initrd=filename
/dev/initrd の内容としてロードするファイルを指定する。 LOADLIN では、これはコマンドラインオプションである。 LILO では、 LILO の設定ファイル /etc/lilo.config 内でコマンドとして使用しなければならない。 このオプションで指定されるファイルは、多くの場合 gzip 圧縮された ファイルシステムイメージである。

 noinitrd
この起動オプションは二段階の起動操作を無効にする。 カーネルは /dev/initrd が初期化されていない場合と同様の、通常のブートアップ動作を行う。 このオプションを用いると、ブートローダーによってメモリー上にロードされた /dev/initrd の内容はそのまま保存される。 つまり、このオプションを用いることによって、 /dev/initrd の内容を (ブート以外の目的に) 利用することが可能になる。また、その内容は ファイルシステムイメージに限定されない。 しかし、 /dev/initrd デバイスは読みだしのみ可能であり、システムの起動後 1 度しか読み出す事 ができない。
root=device-name
通常時ルートファイルシステムとして使われるデバイスを指定する。 LOADLIN では、これはコマンドラインオプションである。 LILO ではコマンドラインオプション、または、 LILO の設定ファイルである /etc/lilo.config のオプションラインとして使用する。 このオプションで指定されるデバイスは、適切なルートファイルシステムとし てマウント可能なデバイスでなければならない。
 

通常時ルートファイルシステムの変更

デフォルトでは、カーネルの設定 (例えば、 rdev(8) を用いてカーネルファイル内にセットされたもの、または、コンパイル時にカー ネルファイル内に埋め込まれたもの)、 または、ブートローダーのオプション設定によって指定されたものが通常時ルー トファイルシステムとして使われる。 NFS マウントされた通常時ルートファイルシステムを利用する場合、 nfs_root_namenfs_root_addrs ブートオプションを使って NFS の設定を与えなければならない。 NFS マウントされたルート (ファイルシステム) についての より詳しい情報は、カーネルのドキュメントファイル Documentation/filesystems/nfs/nfsroot.txt (Linux 2.6.33 より前は Documentation/filesystems/nfsroot.txt) を参照のこと。 ルートファイルシステムの設定についてのより詳しい情報は、 LILOLOADLIN のドキュメントも参照のこと。

また、 /linuxrc を用いる事によっても通常時ルートファイルシステムデバイスを変更すること ができる。 /linuxrc を用いて、通常時ルートデバイスを変更するためには、 /proc がマウントされていなければならない。 /proc をマウントした後で、 /linuxrc は proc ファイル /proc/sys/kernel/real-root-dev, /proc/sys/kernel/nfs-root-name, /proc/sys/kernel/nfs-root-addrs に書き込みを行い、通常時ルートデバイスを変更する。 (NFS ではない) 物理的なルートデバイスの場合、 /linuxrc が新しいルートファイルシステムのデバイス番号を /proc/sys/kernel/real-root-dev に書き込むことで、ルートデバイスが変更される。 NFS ルートファイルシステムの場合、 /linuxrc が NFS の設定を /proc/sys/kernel/nfs-root-name/proc/sys/kernel/nfs-root-addrs に書き込み、それから /proc/sys/kernel/real-root-dev に (疑似 NFS デバイスナンバーである) 0xff を書き込むことで、 ルートデバイスが変更される。 例えば、次のシェルコマンドラインにより、通常時ルートデバイスを /dev/hdb1 に変更できるだろう:


 echo 0x365 >/proc/sys/kernel/real-root-dev

また、NFS の場合、次のようなシェルコマンドラインにより、 193.8.232.2 という IP アドレスを持つ "idefix" という名前の システムの、通常時ルートデバイスとして、 ローカルネットワークの 193.8.232.2 という IP アドレスを持つ NFS サーバの NFS ディレクトリ /var/nfsroot をマウントするように変更できる:


 echo /var/nfsroot >/proc/sys/kernel/nfs-root-name echo 193.8.232.2:193.8.232.7::255.255.255.0:idefix \
    >/proc/sys/kernel/nfs-root-addrs echo 255 >/proc/sys/kernel/real-root-dev

注意: ルートファイルシステムを変更するために /proc/sys/kernel/real-root-dev を使うのは以前の方法である。 ルートファイルシステムを変更する新しい方法についての情報は、 Linux カーネルソースに含まれる Documentation/admin-guide/initrd.rst (Linux 4.10 より前は Documentation/initrd.txt) ファイルを参照のこと。また、 pivot_root(2) や pivot_root(8) も参照のこと。  

使い方

initrd が実装された主な目的は、システムインストール時に、モジュール化されたカー ネルの設定を可能にすることであった。

次のような流れのシステムインストールが可能になる:

1.
ローダープログラムは、フロッピーやその他のメディアから、 最小限のカーネル (例えば、 /dev/ram, /dev/initrd, ext2 ファイルシステムのみのサポートしたカーネル) をブートし、 gzip 圧縮された初期ファイルシステムイメージを /dev/initrd にロードする。
2.
実行ファイル /linuxrc は、(1) 通常時ルートファイルシステムのマウントに何が必要か (すなわち、デバイスタイプ、デバイスドライバ、ファイルシステム)、 (2) 配布メディアに何が必要か (例えば、CD-ROM, ネットワーク、テープなど) を決定する。決定は、ユーザーへの問い合わせ、自動検出、あるいはその両者の 方法を組み合わせて行われる。
3.
実行ファイル /linuxrc は、初期ルートファイルシステムから必要なモジュールをロードする。
4.
実行ファイル /linuxrc は、ルートファイルシステムを作成し、配置する (この段階では、通常時ルー トファイルシステムは完全なシステムである必要はない)。
5.
実行ファイル /linuxrc は、 /proc/sys/kernel/real-root-dev を設定し、 /proc、通常の root ファイルシステム、マウントされているその他のファイルシステムをアンマウントし、実行を終了する。
6.
次に、カーネルは、通常時ルートファイルシステムをマウントする。
7.
この段階で、ファイルシステムは全く変更が行われていない状態で、 アクセスできる状態になる。 また、ブートローダーをインストールすることができる。
8.
ブートローダーを設定し、システム起動時に使用されるカーネルモジュールのセッ トを含んだファイルシステムを /dev/initrd にロードする (例えば、 /dev/ram0 デバイスの内容を修正し、アンマウントする。最後に、 /dev/ram0 のイメージをファイルに書き出す)。
9.
これで、システムがブート可能になる。この後、さらにその他のインストール の作業を実行できる。

上記の動作での /dev/initrd の役割のキーポイントは、初期カーネルの選択や大きなジェネリックカーネル、 カーネルの再構築なしに、通常のシステム操作で再利用可能な設定データを利 用することにある。

2 番目のケースは、一つの管理上のネットワークにおいて、異なる設定のハー ドウェアのシステム上で Linux を動作させるためのインストールを行う場合 である。 このようなケースの場合、ごく小数のカーネルのセット (理想的にはたった一 つのカーネル) のみを利用し、システム固有の設定情報は可能な限り小さくす ることが望ましいであろう。 この場合、全ての必要なモジュールが入った共通ファイルを作成する。 そして、 /linuxrc ファイル、または、 /linuxrc から実行されるファイルのみを異なったものにしておく。

3 番目のケースは、より便利な復旧用ディスクを作る場合である。 ルートファイルシステムのパーティションの位置といった情報は ブート時に必要ないため、 /dev/initrd からロードされたシステムは、 必要な正常性チェックを行った後で、ユーザーへの問い合わせや自動検出 (もしくはその両方) を行うことができるようになる。

(他にもたくさん例があるだろうが) 最後の例としては、 initrd を利用すると、CD-ROM 上の Linux ディストリビューションを より簡単に CD-ROM からインストールすることができるだろう。 ディストリビューションは、 LOADLIN を使って、フロッピーを全く利用せずに CD-ROM から /dev/initrd を直接ロードすることができる。 また、 LILO ブートフロッピーを使ってブートを行い、 /dev/initrd を通して CD-ROM からより大きな RAM ディスクを起動することもできる。  

ファイル

/dev/initrd
/dev/ram0
/linuxrc
/initrd  

注意

1.
現在のカーネルでは、 /dev/ram0/ から /initrd に移動された際に、移動時にマウントされていたファイルシステムは、 その後も継続的にアクセス可能である。しかし、 /proc/mounts のエントリーは更新されない。
2.
現在のカーネルでは、ディレクトリ /initrd が存在しない場合、 /dev/ram0 を何らかのプロセスが利用していたり、何らかのファイルシステムが /dev/ram0 上にマウントされていると、 /dev/ram0 は完全にはアンマウント「されない」。 /dev/ram0 が、完全にアンマウント「されなければ」、 /dev/ram0 はメモリー上に残ってしまうはずである。
3.
/dev/initrd の利用者は、上記の注意事項で述べた動作に依存しないようにすべきである。 これらの動作は Linux カーネルの将来のバージョンでは変更される かもしれないからだ。
 

関連項目

chown(1), mknod(1), ram(4), freeramdisk(8), rdev(8)

Linux カーネルソースの Documentation/admin-guide/initrd.rst (Linux 4.10 より前では Documentation/initrd.txt)、 LILO のドキュメント、LOADLIN のドキュメント、SYSLINUX のドキュメント  

この文書について

この man ページは Linux man-pages プロジェクトのリリース 5.10 の一部である。プロジェクトの説明とバグ報告に関する情報は https://www.kernel.org/doc/man-pages/ に書かれている。


 

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