「ファクトリ」とはどのようなもので、なぜ使うのでしょうか。ここでファクトリとは、「ファクトリ」設計パターンの 1 つを実装したソフトウェアを指します。一般にファクトリ実装は、1 つのオブジェクトにほかのオブジェクトの作成やアクセスを管理させる必要がある場合に便利です。Java™ Remote Method Invocation (Java RMI) でファクトリを使うことにより、Java RMI レジストリに登録するオブジェクトの数を減らすことができます。
銀行で預金するとき、顧客は「金庫まで歩いていって自分の名前の引き出しを開き、お金を入れて引き出しを閉じ、立ち去る」ことはしません。最初に口座を開くときにはどうするでしょうか。銀行に行って担当者と話し、書類に記入します。引き換えに通帳やカードを受け取ります。そのあとは、この通帳やカードを使って口座にアクセスすることができます。
銀行の担当者はファクトリの一例です。その担当者または担当者の役割をする ATM (現金自動振り込み/支払い機) が、個々の口座の作成や口座へのアクセスを管理します。
利用者カードを受け取ったからといって、図書館に入って借りたい本をそのまま持ち出すことはできません。本を持って図書館から出るには、本の貸し出し手続きをしなければなりません。つまり、利用者カードを職員に見せます。職員はそのカードを使って図書館のデータベースにアクセスし、その人から返却の遅れている本がないか調べ、その本がその人に貸し出し中であることを登録します。この場合は、職員が本への利用者のアクセスを管理するので、職員を本のファクトリと考えることができます。
ほかの Java RMI プログラムと同様に、いくつかの基本的要素があります。サーバーは、1 つまたは複数のリモートオブジェクトを作成します (各リモートオブジェクトはリモートインタフェースを実装する)。クライアントは、ネームサーバー (rmiregistry
) にアクセスしてリモートオブジェクトの 1 つへの参照を取得します。rmiregistry
は、クライアントからサーバーへの最初の連絡を簡単にします。
次の図と手順では、次のことを前提とします。
Factory
と Product
があり、クライアントはこれらを理解しているFactoryImpl
は Factory
インタフェースを実装し、ProductImpl
は Product
インタフェースを実装するFactoryImpl
は rmiregistry
に登録する (または登録される)Factory
への参照を要求するrmiregistry
は FactoryImpl
へのリモート参照を返すFactoryImpl
上のリモートメソッドを呼び出して、ProductImpl
へのリモート参照を取得するFactoryImpl
は、既存の ProductImpl
へのリモート参照、またはクライアントの要求に基づき新しく作成した ProductImpl へのリモート参照を返すProductImpl
上のリモートメソッドを呼び出すコードでは、AccountManager
(担当行員) はリモートインタフェースになり、リモートメソッドを 1 つ以上持ちます。これらのメソッドは、Account
(口座) インタフェースを実装したオブジェクトを返します。Account
は、口座のインスタンスに対して実行できるすべての操作 (預け入れや引き出し、残高照会、記帳など) を宣言したインタフェースになります。
Java RMI では、AccountManager
実装のインスタンスだけが Java RMI レジストリに登録されます。AccountManager
実装は、預金口座と同様に Account
実装へのリモート参照 (または直列化されたインスタンス) を返すファクトリです。
図書館の例では、Librarian
(職員) はリモートインタフェースになり、LibraryCard
(利用者カード) インタフェースを実装したオブジェクトを返すメソッドを 1 つ以上持ちます。さらに Librarian
インタフェースには本や CD やビデオテープへのアクセスを許可するメソッドがあり、本や CD やビデオテープには Loanable
(貸し出し可能) インタフェースが実装されています。
Java RMI では、Librarian
実装のインスタンスだけが Java RMI レジストリに登録されます。Librarian
実装は、LibraryCard
実装および Loanable
オブジェクト実装へのリモート参照 (または直列化されたインスタンス) を返すファクトリです。
ここで示した銀行と図書館の例は完全なものではありませんが、Java RMI のファクトリパターンを理解する上では役に立ちます。