このチュートリアルでは、おなじみの「Hello World」プログラムの分散システム版を、Java™ の RMI (Remote Method Invocation、リモートメソッド呼び出し) を Internet Inter-ORB Protocol (IIOP) 経由で使用して作成する手順を説明します。RMI-IIOP は、CORBA (Common Object Request Broker Architecture) 機能を、ほかの多くのプログラミング言語およびプラットフォームに対する Java 接続性に追加します。RMI-IIOP により、Web 対応の分散 Java リモート Management Group が可能になります。ランタイムコンポーネントには、IIOP 通信を使った分散コンピューティング用の Java ORB が含まれています。
RMI-IIOP は、IIOP をベースとなるトランスポートとして使用して RMI インタフェースをプログラミングしたい Java プログラマ向けです。RMI-IIOP はさまざまな言語で実装される CORBA オブジェクトとの相互運用性を提供しますが、リモートインタフェースをあらかじめ Java RMI インタフェースとして定義しておく必要があります。EJB のリモートオブジェクトモデルは RMI ベースなので、Enterprise JavaBeans (EJB) を使うプログラマには特に有用です。
分散アプリケーションを作成するためのもう 1 つの選択肢として、Java™ IDL があります。Java IDL は、CORBA インタフェース定義言語 (IDL) で定義されたインタフェースに基づいて Java プログラミング言語でプログラムを記述したい CORBA プログラマ向けです。これは「通常どおりの」CORBA プログラミングで、C++ や COBOL のようなほかの言語とまったく同じ方法で Java をサポートしています。
ここで例として紹介する分散型の「Hello World」プログラムでは、クライアントアプリケーションから IIOP 経由でサーバー (そのクライアントアプリケーションのダウンロード元のホスト上で稼働している) に対してリモートメソッド呼び出しを行います。このクライアントアプリケーションを実行すると、「Hello World!」が表示されます。
このチュートリアルの構成は、次のとおりです。
このセクションで行うタスクは 3 つあります。
HelloInterface.java - リモートインタフェースHelloImpl.java - HelloInterface を実装するリモートオブジェクトの実装HelloServer.java - リモートオブジェクト実装のインスタンスを作成し、そのインスタンスをネームサービスの名前にバインドする、RMI サーバーHelloClient.java - リモートメソッド sayHello() を呼び出すクライアントアプリケーションRemote インタフェースを実装するクラスのインスタンスです。作成するリモートインタフェースでは、ほかのマシンから呼び出したい各メソッドを宣言します。リモートインタフェースには、次の特性があります。
public として宣言する必要があります。そうしないと、クライアントがリモートインタフェースと同じパッケージ内にある場合を除いて、リモートインタフェースを実装しているリモートオブジェクトをクライアントがロードしようとした時点でエラーが発生します。java.rmi.Remote インタフェースを拡張します。throws 節内で java.rmi.RemoteException (または RemoteException のスーパークラス) を宣言する必要があります。HelloImpl) ではなく、リモートインタフェースの型 (たとえば、HelloInterface) として宣言する必要があります。この例では、すべてのソースファイルを同じディレクトリ (たとえば、$HOME/mysrc/RMIHelloPOA) 内に作成します。リモートインタフェース HelloInterface のインタフェース定義は、次のとおりです。このインタフェースには、ただ 1 つのメソッド sayHello が含まれています。
//HelloInterface.java
import java.rmi.Remote;
public interface HelloInterface extends java.rmi.Remote {
public void sayHello() throws java.rmi.RemoteException;
}
java.rmi.RemoteException をスローすることによって報告します。分散システム上での障害および回復の詳細については、分散コンピューティングでの注意事項を参照してください。
リモートオブジェクトの実装クラス HelloImpl.java は、少なくとも次の条件を満たしていなければなりません。
HelloImpl.java: のソースは次のとおりです。そのあと、上記の各ステップについて説明します。
//HelloImpl.java
import javax.rmi.PortableRemoteObject;
public class HelloImpl extends PortableRemoteObject implements HelloInterface {
public HelloImpl() throws java.rmi.RemoteException {
super(); // invoke rmi linking and remote object initialization
}
public void sayHello() throws java.rmi.RemoteException {
System.out.println( "It works! Hello World!!" );
}
}
Java プログラミング言語では、あるインタフェースを実装することをクラスが宣言すると、そのクラスとコンパイラの間で契約が結ばれます。この契約によって、そのクラスは、そのインタフェース内で宣言された各メソッドシグニチャーに対して、メソッドの本体 (つまり定義) を提供することを約束します。インタフェースのメソッドは、暗黙のうちに public および abstract として宣言されているため、実装クラスでその契約が果たされない場合、そのクラスは定義に基づき abstract になります。そのクラスが abstract として宣言されていない場合は、コンパイラによってその事実が指摘されます。
この例では、実装クラスは HelloImpl です。このクラスは、どのリモートインタフェースを実装するのかを宣言します。HelloImpl クラスの宣言は、次のとおりです。
public class HelloImpl extends PortableRemoteObject
implements HelloInterface{
便宜上、実装クラスはリモートクラスを拡張できます。この例では、リモートクラスは javax.rmi.PortableRemoteObject です。PortableRemoteObject を拡張していることにより、HelloImpl クラスを、通信に IIOP ベースのトランスポートを使うリモートオブジェクトを作成するために利用できます。
さらに、リモートオブジェクトのインスタンスは「エクスポート」される必要があります。リモートオブジェクトをエクスポートすると、そのオブジェクトは、匿名ポート上でリモートオブジェクトへの着呼を監視することによって、着信したリモートメソッド要求を受け入れることができるようになります。javax.rmi.PortableRemoteObject を拡張すると、そのクラスは作成時に自動的にエクスポートされます。
オブジェクトのエクスポートは、java.rmi.RemoteException をスローする可能性があるため、コンストラクタがほかに何も行わない場合でも、RemoteException をスローするコンストラクタを定義する必要があります。コンストラクタを定義しなかった場合は、javac は、次のエラーメッセージを生成します。
HelloImpl.java:3: unreported exception java.rmi.RemoteException; must be
caught or declared to be thrown.
public class HelloImpl extends PortableRemoteObject implements HelloInterface{
^
1 error
復習: リモートオブジェクトの実装クラスが行う必要のある事柄は、次のとおりです。
java.rmi.RemoteException をスローするようにコンストラクタを宣言するHelloImpl クラスのコンストラクタは、次のとおりです。
public HelloImpl() throws java.rmi.RemoteException {
super();
}
次の点に注意してください。
super メソッド呼び出しは、リモートオブジェクトをエクスポートする javax.rmi.PortableRemoteObject の引数なしのコンストラクタを呼び出します。java.rmi.RemoteException をスローする必要があります。java.rmi.RemoteException は、実行時例外ではなく、チェック例外です。
スーパークラスの引数なしのコンストラクタ super() への呼び出しは、省略したとしてもデフォルトで発生しますが、この例では、クラスの前にスーパークラスが構築されることを明確にするために、この呼び出しを省略せずに記述しました。
sayHello() メソッドの実装例は、次のようになります。この例では、呼び出し側に「It works! Hello World!」という文字列が返されます。
public void sayHello() throws java.rmi.RemoteException {
System.out.println( "It works! Hello World!!" );
}
リモートメソッドに渡す引数、またはリモートメソッドからの戻り値は、Java プラットフォーム用のどのデータ型であってもかまいません。さらに、インタフェース java.io.Serializable を実装したオブジェクトであれば、オブジェクト型であってもかまいません。java.lang および java.util 内のコアクラスの大部分は、Serializable インタフェースを実装しています。RMI では、次のようになります。
static または transient とマークされたもの以外は、オブジェクトのすべてのデータメンバー (またはフィールド) がコピーされます。rmic を使ってスタブおよびスケルトンを生成する」で説明する。サーバークラスは、リモートオブジェクト実装のインスタンスを生成し、そのインスタンスをネームサービスの名前にバインドする main メソッドを持ちます。この main メソッドを含むクラスは、実装クラスそのものである場合も、まったく別のクラスである場合もあります。
この例では、main メソッドは HelloServer.java の一部として含まれており、次の処理を実行します。
HelloServer.java: のソースは次のとおりです。そのあと、上記の各ステップについて説明します。
//HelloServer.java
import javax.naming.InitialContext;
import javax.naming.Context;
import javax.rmi.PortableRemoteObject ;
//Please note that internal Sun APIs
//may change in future releases.
import com.sun.corba.se.internal.POA.POAORB;
import org.omg.PortableServer.*;
import java.util.*;
import org.omg.CORBA.*;
import javax.rmi.CORBA.Stub;
import javax.rmi.CORBA.Util;
public class HelloServer {
public HelloServer(String[] args) {
try {
Properties p = System.getProperties();
// add runtime properties here
//Please note that the name of the servertool
//class may change in future releases.
p.put("org.omg.CORBA.ORBClass",
"com.sun.corba.se.internal.POA.POAORB");
p.put("org.omg.CORBA.ORBSingletonClass",
"com.sun.corba.se.internal.corba.ORBSingleton");
ORB orb = ORB.init( args, p );
POA rootPOA = (POA)orb.resolve_initial_references("RootPOA");
// STEP 1: Create a POA with the appropriate policies
Policy[] tpolicy = new Policy[3];
tpolicy[0] = rootPOA.create_lifespan_policy(
LifespanPolicyValue.TRANSIENT );
tpolicy[1] = rootPOA.create_request_processing_policy(
RequestProcessingPolicyValue.USE_ACTIVE_OBJECT_MAP_ONLY );
tpolicy[2] = rootPOA.create_servant_retention_policy(
ServantRetentionPolicyValue.RETAIN);
POA tPOA = rootPOA.create_POA("MyTransientPOA", null, tpolicy);
// STEP 2: Activate the POA Manager, otherwise all calls to the
// servant hang because, by default, POAManager will be in the
// HOLD state.
tPOA.the_POAManager().activate();
// STEP 3: Instantiate the Servant and activate the Tie, If the
// POA policy is USE_ACTIVE_OBJECT_MAP_ONLY
HelloImpl helloImpl = new HelloImpl();
_HelloImpl_Tie tie = (_HelloImpl_Tie)Util.getTie( helloImpl );
String helloId = "hello";
byte[] id = helloId.getBytes();
tPOA.activate_object_with_id( id, tie );
// STEP 4: Publish the object reference using the same object id
// used to activate the Tie object.
Context initialNamingContext = new InitialContext();
initialNamingContext.rebind("HelloService",
tPOA.create_reference_with_id(id,
tie._all_interfaces(tPOA,id)[0]) );
System.out.println("Hello Server: Ready...");
// STEP 5: Get ready to accept requests from the client
orb.run();
}
catch (Exception e) {
System.out.println("Problem running HelloServer: " + e);
e.printStackTrace();
}
}
public static void main(String args[]) {
new HelloServer( args );
}
}
main メソッドでは、まず、適切なポリシーを持つ Portable Object Adapter (POA) を作成する必要があります。たとえば、
Policy[] tpolicy = new Policy[3];
tpolicy[0] = rootPOA.create_lifespan_policy(
LifespanPolicyValue.TRANSIENT );
tpolicy[1] = rootPOA.create_request_processing_policy(
RequestProcessingPolicyValue.USE_ACTIVE_OBJECT_MAP_ONLY );
tpolicy[2] = rootPOA.create_servant_retention_policy(
ServantRetentionPolicyValue.RETAIN);
POA tPOA = rootPOA.create_POA("MyTransientPOA", null, tpolicy);
Portable Object Adaptor (POA) は、複数の ORB 実装で使用できるオブジェクトアダプタを提供するために設計されていて、異なるベンダーの実装に対応する場合も最低限の書き直しで済むようになっています。POA のサポートは、J2SE version 1.4 で導入されました。
POA は、少なくともクライアントの立場からは持続オブジェクトが可能になるようにしています。つまり、サーバーが物理的に何度再起動されても、またはさまざまなオブジェクト実装による実装が行われても、クライアントに関係していればこれらの持続オブジェクトは常に存在し、格納されたデータ値は保守されています。
POA を利用すると、オブジェクトの実装者は、ずっと多くの制御が可能になります。以前は、オブジェクトを実装することは、メソッドの要求に応答して実行されるコードだけの責任でした。今では、それに加えて、オブジェクトの実装者が、オブジェクトの識別、状態、記憶領域、およびライフサイクルをもっと制御することができます。
この例では、次のようなポリシー値を設定しています。
LifespanPolicyValue には、次の値を指定できます。
TRANSIENT - その POA で実装されたオブジェクトは、それらが最初に作成される POA インスタンスよりも長く存続することはできません。PERSISTENT - その POA で実装されたオブジェクトは、それらが最初に作成されるプロセスよりも長く存続できます。RequestProcessingPolicyValue には、次の値を指定できます。
USE_ACTIVE_OBJECT_MAP_ONLY - オブジェクト ID がアクティブオブジェクトマップ内で見つからない場合、クライアントに OBJECT_NOT_EXIST 例外が返されます。RETAIN ポリシーも必須です。USE_DEFAULT_SERVANT - オブジェクト ID がアクティブオブジェクトマップ内で見つからない場合、または NON_RETAIN ポリシーが存在する場合、set_servant オペレーションを使ってデフォルトサーバントが POA に登録されていれば、要求はデフォルトサーバントにディスパッチされます。USE_SERVANT_MANAGER - オブジェクト ID がアクティブオブジェクトマップ内に見つからない場合か、NON_RETAIN ポリシーが存在する場合、set_servant_manager 操作を使ってサーバントマネージャーが POA に登録されているなら、サーバントマネージャーがサーバントを検索するか、例外を発生させます。ServantRetentionPolicyValue には、次の値を指定できます。
RETAIN - その POA がアクティブなサーバントを Active Object Map に保存することを示します。POA の作成時に ServantRetentionPolicy が指定されていない場合、デフォルトは RETAIN となります。NON_RETAIN - サーバントが POA によって保存されないことを示します。POA ポリシーの詳細は、CORBA/IIOP 2.3.1 仕様 (http://www.omg.org/cgi-bin/doc?formal/99-10-07) の第 11 章「Portable Object Adapter」を参照してください。
各 POA オブジェクトには、POAManager オブジェクトが関連付けられています。POA マネージャーには、1 つまたは複数の POA オブジェクトを関連付けることができます。POA マネージャーは、関連付けられている POA の処理状態をカプセル化します。このステップでは、POA マネージャーを起動します。このステップを実行しないと、POA マネージャーはデフォルトでは HOLD 状態になっているため、Servant に対するすべての呼び出しがハングアップしてしまいます。
tPOA.the_POAManager().activate();
main メソッドでは、リモートオブジェクト実装のインスタンス (つまりサーバント) を作成する必要があります。たとえば、
HelloImpl helloImpl = new HelloImpl();
コンストラクタはリモートオブジェクトをエクスポートします。これは、リモートオブジェクトが作成された時点で、そのリモートオブジェクトは着呼を受け入れる準備ができていることを意味します。
RMI-IIOP テクノロジを使用している実装は、その実装をインタフェースに関連付けるために委譲 (「Tie モデル」と呼ばれる) を使用します。上記のように、実装のインスタンスを作成したときは、そのインスタンスを CORBA インタフェースに関連付けるために Tie オブジェクトを作成する必要もあります。次のコード行は、Tie を起動するためのものです (ただし、POA ポリシーが USE_ACTIVE_OBJECT_MAP_ONLY の場合のみ)。
_HelloImpl_Tie tie = (_HelloImpl_Tie)Util.getTie( helloImpl );
String helloId = "hello";
byte[] id = helloId.getBytes();
tPOA.activate_object_with_id( id, tie );
リモートオブジェクトがサーバーに登録されたあとは、呼び出し側は、オブジェクトを名前で検索し (ネームサービスを利用する)、リモートオブジェクトへの参照を取得してはじめて、そのオブジェクトのメソッドをリモートから呼び出せるようになります。この例では、Object Request Broker Daemon (orbd) を使用しています。orbd は、ブートストラップサービス、一時ネームサービス、持続ネームサービス、およびサーバーマネージャーが入っているデーモンプロセスです。
たとえば、次のコードは、「HelloService」という名前をリモートオブジェクトへの参照にバインドします。
Context initialNamingContext = new InitialContext();
initialNamingContext.rebind("HelloService",
tPOA.create_reference_with_id(id,
tie._all_interfaces(tPOA,id)[0]) );
System.out.println("Hello Server: Ready...");
rebind メソッド呼び出しの引数については、次の点に注意してください。
"HelloService" は、バインドするリモートオブジェクトの名前を表す java.lang.String ですtPOA.create_reference_with_id(id, tie._all_interfaces(tPOA,id)[0] は、バインドするリモートオブジェクトのオブジェクト ID です
orb.run();
この例のクライアントアプリケーションは、リモートから sayHello メソッドを呼び出して、クライアントアプリケーションが実行されたときに「Hello World!」という文字列を表示します。クライアントアプリケーションのコードは、次のとおりです。
//HelloClient.java
import java.rmi.RemoteException;
import java.net.MalformedURLException;
import java.rmi.NotBoundException;
import javax.rmi.*;
import java.util.Vector;
import javax.naming.NamingException;
import javax.naming.InitialContext;
import javax.naming.Context;
public class HelloClient {
public static void main( String args[] ) {
Context ic;
Object objref;
HelloInterface hi;
try {
ic = new InitialContext();
} catch (NamingException e) {
System.out.println("failed to obtain context" + e);
e.printStackTrace();
return;
}
// STEP 1: Get the Object reference from the Name Service
// using JNDI call.
try {
objref = ic.lookup("HelloService");
System.out.println("Client: Obtained a ref. to Hello server.");
} catch (NamingException e) {
System.out.println("failed to lookup object reference");
e.printStackTrace();
return;
}
// STEP 2: Narrow the object reference to the concrete type and
// invoke the method.
try {
hi = (HelloInterface) PortableRemoteObject.narrow(
objref, HelloInterface.class);
hi.sayHello();
} catch (ClassCastException e) {
System.out.println("narrow failed");
e.printStackTrace();
return;
} catch( Exception e ) {
System.err.println( "Exception " + e + "Caught" );
e.printStackTrace( );
return;
}
}
}
まず、クライアントアプリケーションは、リモートオブジェクト実装 (「HelloService」として公開されている) への参照を、Java Naming and Directory Interface [TM] (JNDI) 呼び出しを使用してネームサービスから取得します。Naming.rebind メソッドと同様に、Naming.lookup メソッドは、検索するオブジェクトの名前を表す java.lang.String 値を引数として取ります。検索したいオブジェクトの名前を Naming.lookup() に提供すると、その名前にバインドされたオブジェクトが返されます。
_HelloImpl_Stub インスタンスを返すlookup メソッドは、リモートオブジェクト (HelloImpl) のスタブインスタンスを受け取り、スタブクラス (_HelloImpl_Stub) をロードするNaming.lookup は、呼び出し側 (HelloClient) にスタブを返すsayHello() を呼び出して、コマンド行に「It works!Hello World!!」という文字列を表示させる。HelloInterface.java には、リモートインタフェースのソースコードが入っていますHelloImpl.java には、リモートオブジェクト実装のソースコードが入っていますHelloServer.java には、サーバーのソースコードが入っていますHelloClient.java には、クライアントアプリケーションのソースコードが入っていますHelloImpl.java をコンパイルして、rmic を実行するのに必要な .class ファイルを作成します。次に、rmic コンパイラを実行して、スタブとスケルトンを作成します。スタブとは、リモートオブジェクトのクライアント側のプロキシのことで、RMI-IIOP 呼び出しをサーバー側のディスパッチャーに転送します。続いて、ディスパッチャーは、その呼び出しを実際のリモートオブジェクト実装に転送します。最後に、残りの .java ソースファイルをコンパイルして、.class ファイルを作成します。
このセクションで実行するタスクは次のとおりです。
スタブファイルとスケルトンファイルを作成するには、リモートオブジェクト実装の入ったコンパイル済みクラスファイルの完全指定パッケージ名について、rmic コンパイラを実行する必要があります。この例では、リモートオブジェクト実装の入ったファイルは HelloImpl.java です。スタブとスケルトンを生成するためには、まず、次のようにして HelloImpl.java をコンパイルする必要があります。
javac -d . -classpath . HelloImpl.java
「-d .」オプションは、生成されたファイルを、コンパイラを実行しているのと同じディレクトリに置くことを示します。「-classpath .」オプションは、HelloImpl.java が依存しているファイルが、このディレクトリ内にあることを示します。
rmic を使ってスタブおよびスケルトンを生成するrmic コンパイラを、-poa -iiop オプションを指定して実行します。rmic -poa -iiop コマンドは、引数に 1 つ以上のクラス名をとり、_MyImpl_Tie.class および _MyInterface_Stub.class という形式のクラスファイルを生成します。この例では、リモート実装ファイル HelloImpl.class のクラス名を渡します。
rmic のオプションの詳細は、Solaris オペレーティング環境用 rmic のマニュアルページまたは Microsoft Windows 用 rmic のマニュアルページを参照してください。
HelloImpl リモートオブジェクト実装のスタブおよびスケルトンを作成するには、次のように rmic を実行します。
rmic -poa -iiop HelloImpl
上記のコマンドによって、次のファイルが作成されます。
_HelloInterface_Stub.class - クライアントスタブ_HelloImpl_Tie.class - サーバースケルトンソースファイルをコンパイルするには、次の javac コマンドを実行します。
javac -d . -classpath . HelloInterface.java HelloServer.java HelloClient.java
このコマンドにより、HelloInterface.class、HelloServer.class、および HelloClient.class の各クラスファイルが作成されます。これらのファイルはそれぞれ、リモートインタフェース、サーバー、そしてクライアントアプリケーションです。javac のオプションの詳細は、Solaris 用 javac のマニュアルページまたは Microsoft Windows 用 javac のマニュアルページを参照してください。
orbd) を使用します。これには、一時ネームサービスと持続ネームサービスの両方が組み込まれており、J2SE 1.4 以降をダウンロードすれば入手できます。
呼び出し側 (クライアント、ピア、またはクライアントアプリケーション) がリモートオブジェクトのメソッドを呼び出すには、呼び出し側はまずリモートオブジェクトへの参照を取得する必要があります。
リモートオブジェクトがサーバーに登録されると、呼び出し側は、そのオブジェクトを名前によって検索して、リモートオブジェクトへの参照を取得できます。そうすれば、そのオブジェクトのメソッドをリモートから呼び出せます。
ネームサービスを起動するには、コマンド行から orbd を実行します。このコマンドからは何の出力もありません。通常、バックグラウンドで実行されます。orbd ツールの詳細は、orbd のマニュアルページを参照してください。
この例の場合、Solaris オペレーティングシステムでは次のコマンドを実行します。
orbd -ORBInitialPort 1060&
Microsoft Windows オペレーティングシステムでは、次のコマンドを実行します。
start orbd -ORBInitialPort 1060
orbd を実行するポートを指定する必要があります。この例でポートとして 1060 が選ばれているのは、Solaris オペレーティングシステムでは、プロセスを 1024 より下のポートで開始するユーザーはルートになる必要があるからです。
リモートインタフェースを変更したり、変更または追加されたリモートインタフェースをリモートオブジェクトの実装で使用する場合は、必ずサーバーをいったん停止してから再起動する必要があります。そうしないと、ネームサービスでバインドされるオブジェクト参照の型が、変更されたクラスと一致しなくなります。
端末ウィンドウをもう 1 つ開き、この例のソースファイルが入っているディレクトリに移ります。クライアントを実行するための下記のコマンドは、読みやすくするために複数行に分けてありますが、実際にコマンドを入力するときには改行を入れないでください。次のコマンドは、HelloServer サーバーを起動する方法を示しています。もちろん、orbd ツールを起動するときに 1060 以外のポートや localhost 以外のホストを使用した場合には、下記のコマンドの該当する値を、orbd を起動するときに使用した実際の値で置き換えてください。
java
-classpath .
-Djava.naming.factory.initial=com.sun.jndi.cosnaming.CNCtxFactory
-Djava.naming.provider.url=iiop://localhost:1060
HelloServer
java のオプションの詳細は、Solaris 用 java のマニュアルページまたは Microsoft Windows 用 java のマニュアルページを参照してください。
出力は、次のようになります。
Hello Server: Ready ...
orbd ツールを起動するときに 1060 以外のポートや localhost 以外のホストを使用した場合には、下記のコマンドの該当する値を、orbd を起動するときに使用した実際の値で置き換えてください。
java
-classpath .
-Djava.naming.factory.initial=com.sun.jndi.cosnaming.CNCtxFactory
-Djava.naming.provider.url=iiop://localhost:1060
HelloClient
クライアントアプリケーションを実行すると、次のような出力が端末ウィンドウまたはコマンドプロンプトウィンドウに表示されます。
Client: Obtained a ref. to Hello server.
サーバーウィンドウが次のメッセージを返します。
It works! Hello World!!
これでチュートリアルを終わります。さらに複雑なアプリケーションの作成に進む場合は、次に挙げる情報が役に立ちます。